ESI土肥社長が語る

太陽光ビジネスのあり方2021

脱炭素化の実現に取り組む姿勢を政府が鮮明にした。2021年太陽光発電業界はどうあるべきか。太陽光商社、ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥社長が語った。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち)1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立し、代表取締役に就任。

コロナ禍の影響を考慮し、前回は2021年の太陽光発電市場の動向予測について、少し悲観的な意見をいくつか述べました。

まず住宅用太陽光発電は、自然災害が頻発するなか非常用電源として太陽光発電設備や蓄電設備のニーズは高まるものの、個人消費が回復するまで時間がかかるだろうということです。太陽光発電所投資は、コロナ禍の影響に加え、そもそも低圧太陽光発電の全量売電がFITの適用から外されたうえ、入札制の対象外である50~250kWの高圧案件も系統連系できる用地が減少しています。入札制はルールが改定されますが、それでも一部の有力企業のみ参入できる事業に変わりはないということでした。

こうした厳しい予想をしたのは、コロナ禍もさることながら、政府の制度に頼ったいわば受動的なビジネスから脱却しなければならないのではないかということです。こう言いますと、対極にある自家消費提案や〝非FIT〟事業モデルの構築という話になるのですが、私が伝えたいのは、それらも含めてごく自然にビジネスを展開できる環境を築くことが重要であろうということです。そこが整わないと、中長期的にマーケットが拡大しないからです。

つまり、分散型電源という特性上、太陽光発電は地域の資源になり得、地域経済の発展に資する形で導入され得るはずです。それによって国民的な理解が得られ、事業環境が整い、自家消費提案や非FIT事業もごく自然に受け入れられるようになるのではないでしょうか。

ようやくここに来て政府や自治体が脱炭素化に大きく舵を切っています。これは非常に大きなことで、再生可能エネルギーや太陽光発電の国民的理解を得られるまたとない機会なのです。それは20年12月に政府が閣議決定した追加経済対策から見て取れます。「新型コロナ感染拡大防止」、「経済構造の転換」、「国土強靭化」の3本柱としていますが、総額73.6兆円に及ぶ事業規模のうち、脱炭素化や再エネ推進を軸とした経済構造の転換に51.7兆円も充てるというのです。

しかしこれを受けて、政府の補助金を頼りにしようという発想に終始していては好機を逃しかねません。あくまでも国民的な理解を得られるように、どのような事業を実施していくか、熟考するべきでしょう。

たとえば、住宅用では高額な蓄電設備を無理に売ろうとするのではなく、顧客の要望や期待に応えるという提案を心掛けたり、企業への自家消費提案も、顧客の利益を念頭に最適な設備を提供したりということも大事ですが、それらは当然のことであって、考えなければならないのは、地域経済の発展に資する再エネの事業モデルを練り上げ、実践していくことではないでしょうか。

従来のように、太陽光発電の投資商品的な側面ばかりに目が向けられてきた状況では難しかったのですが、すでに太陽光発電はエネルギー設備として充分機能します。だからこそ、地域経済の発展と結びつけていけるのであって、それを実践するのが太陽光企業のあるべきビジネスではないでしょうか。21年は正念場です。

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