[特別対談 第3回]

蓄電池の可能性

エナーシスジャパン 鈴木浩二代表 × ESI 土肥宏吉社長

PV+自家消費で開花

プロフィール●鈴木浩二(すずき・こうじ) 1953年広島県生まれ、75年ブリヂストン入社、1999年に社内新事業で手掛けた蓄電池事業を持って、同僚7人とスピンアウトし、現在は世界最大の産業用蓄電池メーカー、エナーシスの極東代表を務めている。

鈴木氏●太陽光業界の方々は、系統接続問題を解決する手段として蓄電池を利用しようとしていますが、リチウムイオン蓄電池のkWh単価は10〜20万円です。経産省は以前、kWh単価が2.3万円まで下がれば、蓄電池は普及すると試算していますから、まだ高いのです。

そもそも、太陽光業界の方々は、FITを活用した売電を前提に蓄電池を活用されるつもりでしょうが、その考えでは蓄電池はそれほど普及しないと思います。ただし、自家消費であれば可能性はあります。太陽光発電を独立電源として活用するために蓄電池を使えば、経済的にペイする用途はたくさんあります。というのも、様々な需要家が電力を消費しており、それぞれの負荷の変換効率は70〜90%もバラツキがあるのです。つまり、100の電力を消費していると思っていたら、実際は70だったという負荷は多々あります。

変換効率の悪い負荷に選択的に蓄電池を入れれば、グリッドパリティに近づく用途は多いのです。このとき1次電源は間違いなく太陽光発電です。ですから、太陽光発電と蓄電池による自家消費こそ、最も将来性が見込める分野だと思います。

 

土肥氏●蓄電池のプロの方からの非常に貴重なご意見ですね。日本では、住宅に太陽光発電システムを設置して余剰電力を売電している方々が、徐々に蓄電池を購入し始めていますが、残念ながら、まだ蓄電池に対する投資メリットはないので、非常用電源としての安心だったり、環境やエネルギーへの高い意識だったりが、購買の目的になっています。しかし、今後徐々にビジネスの領域に移っていけば普及は加速します。そうなれば、太陽光発電の位置づけも大きく変わってきます。

 

鈴木氏●いまの売電事業はFIT抜きには成立しませんから、皆さんFITを活用しなければビジネスは成り立たないと考えがちですが、それは間違っています。自家消費を前提に考えれば、採算が合う分野はあります。それを専門家が一つひとつ拾って、商業ベースに乗せることが、非常に重要だと思います。

 

土肥氏●蓄電池には様々な種類があって、どの蓄電池がどの用途に向くのかという基本知識すら、一般の方はほとんど知りません。本来ユーザーに説明しなければならない販売店さんでさえ、理解されていらっしゃる方は意外と少ないように思います。そこで蓄電池の種類や特徴について、お話しいただけますでしょうか。

 

鈴木氏●蓄電池の特徴を比較するとき、通常は、横軸にエネルギー密度、縦軸にパワー密度をとってマッピングしていく方法を採ります。平たく言えば、リチウムイオン蓄電池は、エネルギー密度が高いものもあれば、パワー密度が高いものもある。一方、鉛蓄電池はエネルギー密度が低く、パワー密度が高いのが特徴です。そのほか、アルカリやNASなどもありますが、実用的なのはリチウムイオン蓄電池と鉛蓄電池です。また、系統連系など短周期の出力変動をカバーするのであれば、パワー密度の高い電池、工場のピークカット用はエネルギー密度の高い電池を選ぶべきです。

我々は、リチウムイオン蓄電池と鉛蓄電池を生産しているので、安い鉛蓄電池と、値段は高いがパワー密度の高いリチウムイオン蓄電池の双方を利用して、用途ごとの最適化を図ることが、コストミニマムに繋がると考えています。

 

土肥氏●蓄電池は、種類によって充放電サイクル数も異なるので、それも勘案しながら、用途ごとに使い分けているのでしょうね。

 

鈴木氏●はい。たとえば、夏場のピークをカットして、契約料金を下げ、電気代を節約するために蓄電池を入れる場合と、風力発電など出力が100からゼロまで変動する電源を平準化する目的で導入する場合とでは大きく異なります。前者は7〜8月の2ヵ月だけ蓄電池を使用すればよいので、1年に60サイクルでよいとすれば、鉛蓄電池でも10年間使用できます。しかし後者の短周期変動であれば、何千回も充放電を繰り返すわけですから、リチウムイオン蓄電池となります。

 

土肥氏●今後日本では、太陽光発電の自家消費利用が進み、とくに住宅を中心に蓄電池の導入が増えてくるのでしょうが、家族構成によって各家庭の需要のピークや電力消費量が異なりますから、それに見合った最適な蓄電池を提案していかなければなりません。需要を掘り起こしていくためには、蓄電池メーカーさんの技術開発ももちろんですが、販売側も提案力を高めていかなければならないのでしょうね。

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