関西ローカルからグローバル企業へ
アンフィニ 成長の軌跡
先行き不透明感なPV市場の陰鬱な雰囲気など、どこ吹く風とばかりに、大阪に本拠を構えるアンフィニ(親川智行社長)が太陽光パネルの製販を軸に成長路線を突き進んでいる。同社の軌跡を辿った。
「パネルの製造装置が画一化されたいま、品質は材料選びと出荷前の検査で決まります。要はどれだけ(欠陥品を)弾くかですが、当社は品質に対して一切妥協しません」。
親川社長は、熱いモノづくり魂を覗かせたが、この厳格な品質管理の姿勢が功を奏したのだろう。設計寿命35年の同社の太陽光パネルは、耐久性に優れた製品として、急速に認知度を高めている。
国内だけではない。同社は2015年9月、フィリピンと米国に現地法人を設立し、両国でパネル販売を開始。出荷を順調に伸ばし、100MWの大台が視界に入ってきた。
業績も堅調で、16年3月期の売上高は140億円を超え、税引前利益は7億円程度で推移する見通し。FIT価格が減額され、国内の大手メーカーは厳しい局面を迎えているが、同社の財務状態は健全だ。
理由は、大型投資を控えてきたことだろう。原料を確保し、製造技術や品質管理のノウハウを蓄積しつつも、同社は自社工場を保有しなかった。海外メーカーの工場に専用ラインを設けるファブレス方式を採ってきたため、他社よりも減価償却費が小さい。
さらに、親川社長は強みをこう語る。
「当社は、大手の量産品とは異なり、一部のユーザーを対象に高品質な製品を生産してきたので、市場の影響を受けにくいのです。ニッチな分野で規模は限られていますが、世界各地で100MWの需要は見込めます。当社は1国あたり年間100MW販売を基準に、収益を確保するモデルを築いたのです」。
コモディティ化の波に巻き込まれないよう、ニッチな市場でトップを目指す〝ニッチトップ戦略〟である。同社は昨夏、栃木県大田原市の自社工場で年産100MWラインを稼動させた。
小資本ながら、パネルメーカーとして業績を上げている同社。その戦略眼はどのように培われたのだろうか。
同社の軌跡を辿ると、意外にもセキュリティメーカーからスタートしている。その後、飲食業や車販売、不動産、アパレルなど、様々な分野の会社を設立した。
転機となったのは、監視カメラの納入先から電子部品を調達し、レアメタルを取り出すリサイクル事業だった。やがてシリコン原料のリサイクルを始め、台湾のシリコンメーカーとの取引を通じて太陽光発電分野へ参入したのである。
「当時、台湾にはシリコンの純度を高める技術がなかったので、当社は日本の調合技術を提供し、代わりに原料の調達ルートを確保しました」(親川社長)。
このウィン・ウィンの関係を広げることによって、同社のファブレス生産が実現したのだ。変化を厭わない不断の挑戦と、世界に広げた協力関係が同社の最大の強みだろう。アンフィニは、まだまだ成長の過程にある。