ESI土肥社長が語る
「ドイツでは住宅用が牽引8割が太陽光+蓄電池」
脱炭素政策が打ち出され、太陽光発電市場は中長期的にどう動くのか。太陽光商社ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥社長がドイツの近況をもとに語ってくれた。
日本の将来は、ドイツの動向から見えてくる部分があるかもしれません。ドイツは、電力の自由化や、FITの導入、さらに脱炭素政策においても、日本の先を進んでいるからです。
BSW(ドイツ連邦太陽光産業協会)の2021年1月20日の発表によると、ドイツ国内における2020年の太陽光発電の導入量は前年比25%増の4.4GWでした。内訳を見ると、出力10kW未満の住宅用太陽光発電が1GW、10〜750kWの産業用太陽光発電が2.6GW、750kW以上の大規模太陽光発電所が0.8GWなので、産業用が最も導入規模が大きかったようです。
ただ、対前年比の増加率では、住宅用が前年比97%増、大規模太陽光発電所が82%増と大きく伸びたのに対し、産業用は僅か2%増の微増にとどまりました。つまり、20年はコロナ禍の影響があったにもかかわらず、新規営業の伴う住宅用が停滞するどころか、前年比倍近い成長を遂げたのです。BSWは、21年のドイツにおける太陽光発電の導入量を5GWと予測し、住宅用の成長が市場を牽引するとしています。
この背景には、電力代を外部に支払い続けるよりも住宅に太陽光発電設備と蓄電設備を導入して自家消費する方が経済的という状況があります。ドイツではこの〝蓄電パリティ〟が数年前に実現しており、太陽光発電設備を導入する家庭の8割が蓄電設備も同時に購入しているようです。
実際、ドイツで住宅用太陽光発電設備と蓄電設備をセットで導入する際の価格は、施工費込みのkW換算で2000〜2200ユーロ(約26万〜28万円)です。日本では太陽光発電設備に蓄電設備まで加えると、同60万円は優にかかりますから、日本の半値以下です。一方で、ドイツの家庭向け電力平均単価は1kWhあたり税込み31.8ユーロセント(約41円)と高く、日本より1.5倍ほど割高です。
ドイツでもコロナ禍の〝ステイホーム〟による家庭の電気消費量の増加に伴い、電力代削減への意識が高まった可能性もありますが、いずれにせよ、経済合理的に太陽光発電設備と蓄電設備が導入されているのです。
このほか、ドイツにおける最近の太陽光発電所の建設コストも触れておきましょう。10〜750kWの産業用では、客渡し単価がkWあたり平均700〜800ユーロ(約9万〜10万円)だそうです。750kW以上の大規模太陽光発電所になると、同500ユーロ(約6.4万円)まで価格低減が進んでいるようです。入札対象の750kW以上では、二酸化炭素排出削減の目標達成のために確実に落札したい企業が低価格で応札するようになっていることが価格低減が進んだきっかけになったのかもしれません。
以上、ドイツの状況を踏まえると、住宅用に関してはやはり蓄電設備のコスト低減が鍵でしょう。太陽光発電所開発に関しては、kW500ユーロが〝自立化〟へのコスト水準なのかもしれません。