オムロン、「ハイブリッド蓄電システム」今春発売へ

ポストFITに向けエネルギー効率の最大化を加速

FIT(全量買取り制度)のルール改正、買取り価格のプレミア期間終了、電力小売の全面自由化…。2015年度、太陽光発電マーケットは新たな局面を迎える。そのような中、太陽光用PCS(パワーコンディショナ)大手のオムロンが、ハイブリッド蓄電システムを開発、将来を見据えた動きを加速させている。

1994年から太陽光用PCSの生産を開始したオムロン。長きにわたって業界をリードしてきた。ここ数年はFITの追い風に乗って販売は好調だ。昨年12月にはPCSの累計生産台数が100万台を突破した。

だが15年度からマーケットの潮目が変わる。FITの買取り価格のプレミア期間が7月に終了するうえ、運用ルールが改定されたからだ。今後は、発電した電気の〝全量売電〟から、生み出した電気を自らつかう〝自家消費〟の世界が来るだろう。電気をためる蓄電池との連携が欠かせないはずだ。そこで同社は、将来を見据えた新製品、「太陽光発電用ハイブリッド蓄電システム」を今春発売する。

同システムの最大の特徴は、小型・軽量・長寿命と、三拍子揃ったリチウムイオン蓄電池を採用したこと。家庭用の空気清浄器と同等のサイズ(横406㎜×高さ640㎜×奥行165㎜)の蓄電池は、容量6.4kWhにして重量は約60㎏。成人男性2人で運べる。クレーンによる搬入や基礎工事も不要で設置作業は簡単だ。さらに約8000サイクルと優れた充放電寿命を持つ。

太陽光発電と蓄電池両方の電力変換を1台で行うハイブリッドPCSは、DC/DCコンバータを分けて小型化を実現。共に屋外に壁掛け設置が可能で、従来の太陽光用PCSと同様の施工で据え付けられる。また、電圧上昇抑制時に電気を自動的にためる機能も搭載している。

 

出力制御機能や塩害地設置にも対応へ

同システムの構成機器の一つに電力計測やシステムを制御する「エナジーインテリジェントゲートウェイ」がある。実はこの機器、新たな出力制御ルール下で活躍する優れ物なのだ。

1月末の省令改正により、4月以降は東京・中部・関西電力エリアの50kW未満を除く全ての太陽光設備に、出力制御対応機器の導入が義務付けられる。正式な仕様や運用ルールはまだ決定していないものの、「エナジーインテリジェントゲートウェイ」は、クラウドサーバと連携を予定し、柔軟な対応が可能となる見込みだ。同社は、4月投入を予定する出力制御対応PCSとあわせて準備を進めている。

将来へ向けた取組みを進める一方、足下の太陽光市場では、厳しい環境下に耐え得る製品のニーズも高まっている。そこで同社は、屋外仕様のPCSである「KP□Mシリーズ」の重塩害対応タイプを今年6月に発売する。

防塵・防水性能IP65に準拠した新機種は、従来機では設置が困難だった海岸線から500m以内または潮風が直接当たる場所にも設置できる。隠蔽配線口をなくし、独自開発したジョイントを用いて配線できるように改良、防水性と施工性も向上させた。

IP65に対応した重塩害対応パワコン(KPM-S)