ESIが持ち込む欧州版O&M

独グリーンテックと提携 8月より本格実施

独ソーラーワールドの総代理店としてモジュールの販売を手掛けるヨーロッパ・ソーラー・イノベーション(=ESI、横浜市中央区、土肥宏吉社長)が、今年8月よりO&M(オペレーション・アンド・メンテナンス)を本格的に開始する。独O&M大手のグリーンテック社と提携し、欧州の先進的な運用サービスを持ち込む。両社は最終調整を進めており、近々その内容を明かす予定だが、それに先立ってESIの土肥社長がO&M論を展開した。

ESIの土肥宏吉社長

日本の発電事業者の多くは、万が一に備えるという保険的な意味合いでO&Mサービスを受けているように感じます。O&M業者が、遠隔監視システムで24時間監視し、不具合を発見するとアラームで知らせ、場合によっては駆けつけるといった、緊急時対応を強くアピールするからなのでしょうか。

発電データの履歴を管理して報告書を作成したり、設備を定期的に点検したり、あるいは草刈りや太陽光パネルの清掃も含めたメンテナンスについても、その重要性が徐々に認識されつつあるようですが、やはり一大投資に踏み切る事業者にとっては、万が一のリスクほど怖いものはないのでしょうね。

しかしドイツの先例を見ても明らかなとおり、こうした状況は徐々に変わってくるでしょう。開発ラッシュが落ち着いてくれば、次はより効率よく発電所を管理・運用していくことが重要性を帯びてくる。自ずとO&Mの内容も変わる。

つまり、万が一の緊急事態に備えるのは当たり前で、むしろ20年という長い時間軸のなかで、どう売電収益を高めていくかといった、より資産運用的で、戦略的なO&Mというものが求められるようになると思います。

それはさておき、私は、O&M業者とは、中立的で独立した企業であることが非常に重要だと考えます。O&Mの本質は、発電事業者の資産を守り、運用していくこと。発電事業者と同じ目線に立って信頼関係を築いていかなければなりません。いま、モジュールメーカーやEPC(設計・調達・建設)が、付加価値サービスの一環でO&Mを始めていますが、これにはどうしても限界がある。

仮にモジュールメーカーがO&Mを引き受けたとして考えてみます。モジュールに重大な欠陥があり、O&Mを手掛けるモジュールメーカーはその不具合を発見したのですが、事業者はまだ気づいていないとしましょう。モラルのない企業を除けば、その事実を発電事業者にいち早く報告し、メーカーは製品を取り換えるはずです。そうあってほしいものですが、しかしそれによってメーカーは多大な損失を抱え、存続すら危ぶまれる事態に陥りかねないとなればどうでしょう。メーカーはこの事実を正直に伝えるでしょうか。

これは極論ですが、私が申し上げたいのは、発電事業者とモジュールメーカー、あるいは発電事業者とEPCも同じですが、この両者は、時に対立する関係にあるということです。

だから当社は、中立的なO&M企業で豊富な実績を持つグリーンテック社と提携したのです。彼らはそのサービスの内容も優れていますが、最大の魅力は、どこのメーカーに対しても中立的で、発電事業者の立場に立ってサービスを提供している点です。

当社は彼らと組むことによって、この日本で発電事業者の利益を第一義とするO&Mを提供していきます。