Looopが農業と太陽光の未来を拓く
農業と太陽光発電の両立を──。いま、農地に太陽光発電システムを設置して農作物を育てながら売電するという営農型太陽光発電事業が注目されている。これにいち早く着目し、専用のシステムを商品化したのがループ(東京都文京区、中村創一郎社長)だ。その同社が、このほどユーザーのニーズを汲み取った新商品の販売を本格化した。
昨年3月末、農林水産省が、架台の基礎部分を農地の一時転用の対象と認めたことをきっかけに、営農型太陽光発電所の導入機運が一気に高まった。農業収益に加え、売電収益も得られることから、日本の農業経営を支える新たな取り組みとして期待されている。
これを受け、ループは昨年4月、太陽光パネル同士の間隔を空けて営農に必要な太陽光を取り込める専用システム、『MY発電所キット空中型』を商品化している。今回販売を本格化したのは、これに改良を加えた新商品、『MY発電所キット空中型〝ソラシェア〟』だ。
パネル角度を自由に調整
『ソラシェア』の特長は大きく2つある。
まず、支柱の間隔を5.4mに拡げ、地表から最大3.7mの高さにパネルを設置できるようにしたこと。これによって、パネルの下でトラクターなどの農業機械を使用できる。
さらに、アレイ毎にパネル角度を自由に変えられる可変構造の導入である。設置箇所から、パネルはプラスマイナス30度可動する。営農者が育てる農作物によって日射量を自由に調整できるようにしたのだ。パネルを動かせば積雪を落とすこともできる。
1キットのパネル数は112枚、出力は11.76kWで、設置面積は116.64㎡。1キットは1スパン(縦5.4m×横5.4m)×4台で構成され、4スパンの組み合わせ方は自由だ。正方形や長方形、L字型など、土地の形状に合わせたレイアウトが可能になる。
1キットの価格は348万円(税別、配送料・工事費別途)。今年2月の正式発売以来、引き合いは旺盛で、今年6月から順次設置が始まるという。
営農型太陽光発電といっても、主役はあくまで農業。太陽光発電システムを設置するために農地の一時転用の許可を得るにしても、従来比8割以上の収穫量を維持する必要がある。
そこでループは昨年10月より、太陽光発電の遮光が農作物の収穫に与える影響などについて、宮崎大学農学部と共同研究を開始した。宮崎大学内に『ソラシェア』2キットを今年7月にも設置し、カンショやダイコン、ホウレンソウ、レタス、ネギ、イネを生育し、実証を行っていく予定だ。
全量売電が始まって間もなく丸2年。適地の減少が目立つだけに、営農型太陽光発電は、農業の未来とともに太陽光発電の普及という観点においても重要なカギを握る。農業と太陽光発電の両立の実現へ、ループの挑戦は始まったばかりだ。