ESI土肥社長が予測

コロナ後の太陽光市場

コロナ禍収束の兆しが見えてきたが、太陽光関連市場は平時に戻るのだろうか。ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長が今後の動向を予測した。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち) 1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立し、代表取締役に就任。

太陽光発電業界におけるコロナ禍の影響は、ホテル業界や飲食業界などと比べると、いまのところ軽微であるように思います。太陽光発電は基幹電力として重要性が増しており、設備容量も増加傾向の見込みです。ただ、今後は厳しくなる可能性も否定できないというのが、私の率直な見方です。

まず表面化している影響としては、中国で太陽光関連メーカーの一部工場の操業に影響が出て、設備の納期遅れが発生しました。部材では、一時は中国に製造委託していた日本の架台メーカーやEPC(設計・調達・建設)会社の方々が頭を悩ませていましたが、すでに製品の調達難は解消しているようです。

しかしながら、自家消費用の太陽光発電設備の商談が中断されたり、キャンセルが出たりといった状況は、解消されていないようです。余剰資金があって利益が出ている企業であっても、コロナ禍の影響で先行きが見えないなか、資金計画が立てられないのでしょう。コロナ禍で民間企業は全般的に投資活動を控えていますから、法人向け自家消費用の太陽光発電設備の導入停滞は当面続くでしょう。

では、コロナ禍が一旦収束したとして、6月以降、太陽光発電市場は平時に戻るのかという疑問について、少々悲観的かもしれませんが、予測も交えて私なりに見解を述べたいと思います。

前提として、コロナ禍の前から景気がやや減退していたように思います。そんななか、低圧太陽光発電所のFIT売電が余剰電力に一本化されました。さらにFITの売電単価が4月から下がりましたから、コロナ禍の影響を抜きに考えても、太陽光発電市場の事業環境は厳しくなっていたのです。

確かに、設置件数や設備導入量はそこまで冷え込んでいないように思われますが、それは過去の開発案件の工事が残っているからです。新規の開発案件や商談の総数は減少傾向ですから、自家消費用の太陽光発電設備の導入が着々と進んでいかない限り、マーケットは冷え込んでしまうわけです。

この状況下、コロナ禍によって自家消費用案件の商談が中断しているのです。住宅用太陽光発電設備や蓄電設備の販売に関しても、新規営業が思うようにできない状況にあるようですし、しばらくの間は太陽光関連企業の事業環境は厳しくなるように思います。

コロナ禍に関しても、秋から第二波、第三波が到来する懸念を指摘する声もあります。治療法やワクチンが開発されて、感染による健康被害のリスクが払拭されるところまで収束しない限り、平時には戻らないのではないでしょうか。

こうした点を考慮しますと、21年以降の飛躍の時期に向け、新商品の提案やビジネスモデルの構築など準備しつつも、この1年は耐え忍ぶ時期ではないでしょうか。6月に収束したからといって、体力のない企業が人員を増やすと、思わぬ落とし穴に嵌りかねません。慎重な経営が求められるように思います。

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