「世界最高のモジュールを日本へ」
ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの事業信念
太陽電池大手、独ソーラーワールドの日本向けの販売を一手に担うヨーロッパ・ソーラー・イノベーション(=ESI、横浜市中区、土肥宏吉社長)。ソーラーワールド製モジュールの販売で着々と業績を伸ばしている。2013年末には住宅用太陽光システムの販売に着手するなど業容拡大の動きも見せたが、あくまでモジュールの輸入販売に軸足を置く。同社を率いる土肥社長の事業観を探った。
ESIは12年7月末、独ソーラーワールドの日本進出に伴い、同社の販売総代理店として旗揚げした。創業来扱う商品は一貫してソーラーワールド製のモジュール。至ってシンプルな事業モデルに見受けられるが、背景には土肥社長の揺るぎない〝事業信念〟があった。
「太陽光発電はドイツが先行している。政策や市場、あるいはモジュールやPCS(パワーコンディショナ)、架台、EPC(設計・調達・建設)など。良くも悪くもドイツが最先端です。だから私はその技術や経験から良いところを日本に持ち込み、日本の太陽光発電市場の発展に寄与したかった」。
その土肥社長は、ESIの立ち上げに際し、真っ先にモジュールを扱うことを決めたが、商品の選定には慎重を期している。それはモジュールという商材に対して、自身の確固とした価値基準があったからだろう。それに見合った商品探しに労を取ったのだ。
土肥社長は、1997年に巴工業に入社し、約15年に亘って遠心分離機の営業に携わった。同製品の用途のひとつにシリコン材料があり、そこから太陽光発電との接点を持つ。その後モジュールに関する知見を高め、一時は太陽光関連企業へ転籍し、ドイツで新規事業を立ち上げている。こうした経験を通して、土肥社長はモジュールの〝価値〟に対する見識を深めた。
「新興市場では、モジュールを選ぶ基準の第一にコスト、次に発電効率が挙がる。かつてはドイツも同じで、安価で粗悪なモジュールが大量に設置された。しかし数年経つと、不具合やトラブルが多発し、今では長期間安定して発電するモジュールかどうか、ユーザーはまずそこに目を向けるようになった。発電事業は20年という長期の事業ですから、それが担保されなければ何も始まりません」。
土肥社長にとっては長期信頼性に優れたモジュールこそ〝価値〟のあるもので、その〝価値〟のある商品を日本のユーザーに提供したかった。そのためにはメーカーの設計理念や管理体制、原材料の使用状況など細かく確認しなければならないが、ソーラーワールドのみがすべてに妥協のない会社だったという。
ESIが扱うモジュールは、いずれもソーラーワールド製で、出力250Wの多結晶シリコン型と、270Wと275Wの単結晶シリコン型、さらに意匠性の高いブラックタイプの単結晶シリコン型である。
注目は、新型の両面ガラスモジュール、『サンモジュールプロテクト』。これには30年の出力保証が付与される。初年度劣化率は3%で経年劣化率は実に0.35%と小さい。ゆえに21年後も製品出荷時の90%の出力が保証されるのだ。
「ソーラーワールドが世界トップの出力保証を提供できるのは、長期の耐久性・信頼性を技術で担保できているからです。材料選定や製品設計、製造工程、品質管理とどれを取っても世界最高水準。ソーラーワールドのモジュールこそ世界最高のモジュールです」。
そう熱っぽく語れる土肥社長だからこそ、日本のユーザーの心を動かせるのだろう。ESIは初年度から販売を大幅に伸ばし、今期(2014年6月期)のモジュール販売量は25MWを超え、来期は50MWの大台に達する模様である。
ESIは今年からソーラーワールド製モジュールと、国産PCS、架台で構成した住宅用太陽光システムを売り出す。モジュールの輸入商社からシステム販売へ、そして次は何を目指すのか、目が離せなくなってきた。