ESI土肥社長が語る
「提案力を磨き、恩返しを」
震災から10年。エネルギー改革が進むなか、太陽光発電産業は飛躍的な発展を遂げた。太陽光商社ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥社長は現状をどのように捉えているのか。
この10年を振り返ると、FITの導入は、再生可能エネルギーの普及拡大という点はもちろん、産業の育成という点においても、大成功だったように思います。確かに様々な課題がありました。ただ事実として、新しい産業がこの短期間で形成され、ベンチャー企業が多数誕生し、多くの雇用が創出されたのです。恐らく近年では類を見ない奇跡的な成功事例ではないでしょうか。
とくに思うのは、太陽光発電の知名度の向上です。FITの導入初期は、太陽光発電に対して資産運用や投資商品的な側面ばかり注目され、主に金融関連や投資家の方々に知られる程度でした。しかし、太陽光発電設備の自家消費利用が少しずつ広がり、蓄電設備の導入まで増えると、電力供給設備としての本来の機能が徐々に認知され、新しいニーズが生まれているのです。最近驚いたのは、コロナ用のワクチンを保存するためのバックアップ電源として太陽光発電設備や蓄電設備が使用される事例があったことです。あらゆる業種・業態で急速に認知されているので、太陽光関連企業にとっては、思わぬところに商機があるように思います。
この点に着目すると、今後太陽光関連企業に求められるのは、様々なスキームや技術を駆使した提案力でしょう。PPA(電力売買契約)モデルや自己託送、あるいは蓄電設備のコスト低減や自動制御などの高機能化が進むと、それに伴い、企業のBCP(事業継続計画)対策や『RE100』の実現、電力代の削減のほか、電気自動車の充電などまで、用途が細分化されていきます。つまり、細分化する顧客の要望に沿って最適なシステムを組み上げていく力が求められるように思います。
ともあれ、FITという国民負担のうえに成立した制度のおかげで、太陽光関連企業はこの10年、事業を継続することができたわけです。ならば、恩返しという意味で、今後はより多くの人々の利益にかなうサービスを提供していくべきであり、太陽光関連企業にはそうした使命があるように思います。
むろん、今後はより厳しいコスト低減を求められるでしょうし、ビジネスモデルはさらに複雑になり、高度な技術も要求されるでしょう。ただコロナ禍からの経済再建を脱炭素化への取り組みで実現していこうというグリーンリカバリー(緑の回復)の構想があります。再エネに対する世の中の期待は非常に大きいので、当社も太陽光専門企業として努力を怠らず、これに応えていきたいと考えています。