架台のトップリーダー、奥地建産の新商品戦略
〝20年の長期耐久性〟堅持 軽量化でコスト低減
太陽光発電用架台の製造販売で業界をリードする奥地建産。住宅用太陽光発電向けの架台の販売が堅調なうえ、産業用太陽光発電向けの架台の売れ行きも絶好調だ。その同社が、ここに来て産業用架台の廉価版を開発、今夏にも発売する。〝20年の長期耐久架台〟を謳う同社は、どのようにコスト低減に切り込むのか。同社の商品戦略に迫る。
同社は12年より産業用太陽光発電向けの標準架台の販売を開始した。12年4月から折板屋根用架台『サンキャッチャー』を売り出し、7月には地上設置用架台を発売した。
『サンキャッチャー』の商品コンセプトは〝20年の長期耐久架台〟。屋根との接合部をレール式にして屋根への負荷を軽減したうえ、素材に鉄を採用して強度を高めた。モジュールと架台の耐力は国土交通省の耐風圧試験による目標荷重の2.5倍を超える。モジュールに負荷をかける独自の荷重試験を行なうなど、随所に強度対策を施した。
特筆すべきは高度な表面処理技術を導入した点。塩害地での腐食に耐える高耐食性溶融めっきの架台を製品化し、ユーザーの必要に応じて同表面処理仕様の架台も販売した。この製品には特別に20年の製品保証を付与している。
この長期耐久架台『サンキャッチャー』は他社との差別化が図られ、販売は急速に伸びた。だが一方で、国内の架台マーケットはコスト競争が激化している。とくに地上設置用架台は、杭打ち式基礎などを用いた中国製の製品も流入し、一層熾烈さを増す。
そこで同社は、まず地上設置用架台のコスト低減に取り組んだ。鉄の使用量を極限まで抑えて軽量化を進め、MWあたりの架台の重量を従来の60tから35tまで落とす。それでも強度を維持し、表面処理にも気を配った結果、長期耐久性を損なわずに大幅なコスト低減を成し遂げた。
奥地誠社長は、「品質を犠牲にしたコスト低減は理念に反するので、大きな制約があったが、地上設置用では、やれることはすべてやりました」としたうえで、商品戦略についてさらにこう言及した。
「次は屋根上。今年はメガソーラーから中小規模へ、地上から屋根上へとマーケットの潮目が変わるでしょう。競争力を維持するには折板屋根用の新商品が必要です」。
こうして同社は、折板屋根用架台の新製品『サンキャッチャーミニ(仮称)』の発売を決めた。
「『サンキャッチャー』はハイグレードな架台です。これに加えて、スタンダードな架台も販売していくということです」。
奥地社長は簡略に説明したが、同時に長期耐久性の設計思想は一貫して崩さない考えも強調した。
「折板・重ね式は強度をできるだけ維持しながら、軽くして製造コストを下げました。新製品は『サンキャッチャー』の廉価版ですが、長期耐久性は損なわれません」。
奥地社長がこだわり続ける〝長期耐久性〟。それは半世紀以上に亘る同社の社歴から得たひとつの帰結なのだろう。
奥地建産は1955年の創業後、住宅用鋼製資材や住宅基礎溶接鉄筋の開発・製造を軸に事業を拡大してきた。フィールドが住宅だったことから、30年、40年、あるいは50年という長期に亘る使用環境にも耐え得る資材の開発を求められた。つまり、身を置いた環境から長期耐久資材を製品化しなければならず、多くの経営資源を投じてこれを実現してきたのである。
そして、そこで培った技術力が、太陽光発電用架台の事業の礎をも築く。02年に同社が住宅用太陽光発電向けの架台の製造販売に参入した際も、長期耐久架台であることがユーザーへの訴求力となり、市場に受け入れられている。
現在、同社の住宅用架台の出荷量は、出力換算で月平均18MW、出荷実績は累計21万棟を超えた。12年から産業用架台の出荷量も月平均5MWで推移し、業界トップクラスの生産実績を誇っている。
12年度の売上高99.9億円のうち、太陽光発電用架台の売上は60億円。主力の住宅用資材を上回った。今期の営業目標は売上高130億円で、太陽光発電用架台は86億円を見込んでいる。
〝長期耐久性〟は、同社の成長の源泉であり、経営理念にも通ずる。ゆえにあらゆる商品戦略においても一貫してブレることはない。
「太陽光発電は社会資本。市場がいかに変化しようとも長期耐久性という価値は揺らがない。そう信じて今後も開発に力を入れていきます」。
奥地建産株式会社