ESI土肥社長が示した

コロナ禍の太陽光ビジネス

いままたコロナ感染者が増え続け、早くも第二波の不安が高まるなか、太陽光関連企業はどのように事業と向き合えばよいのか。ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長が見解を示した。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち) 1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立し、代表取締役に就任。

いま、新型コロナウイルスの感染者がまた増え続けています。起こり得る健康被害や経済的影響に対して不安に思われている方々が多いことでしょう。収束の兆しが見えないなかで、どう対処すべきか、明確な答えはなかなか出せません。ならばこの時期は足元のFIT案件の開発に目を向けてもよいのではないでしょうか。

つまり、2019年度までに認定を取得した未稼働案件の建設を順次進めていくとともに、出力50kW以上250kW未満の高圧太陽光発電所のFIT案件を仕込んでみるのです。自家消費率30%以上が条件の低圧太陽光発電設備の開発や出力250kW以上の入札案件を手掛けるよりも、開発しやすいからです。

確かに、キュービクルなどの設備が必要になりますが、土地の開発や造成、系統連系など、低圧太陽光発電所の開発と共通点が多いので、低圧太陽光発電所開発を専業としていた地域の太陽光関連企業でも取り組めるはずです。

仮に案件の売却先が見つからなければ、自社で保有して発電事業を始めるのもひとつです。コロナ禍で自家消費設備の提案が中断しかねないという状況を考慮しますと、無理して自家消費提案を進めるのではなく、FITを活用するのもひとつの方法であるように思います。体力のない企業が人員を増やして営業活動を強化すると、思わぬ落とし穴に嵌りかねません。21年以降の飛躍の時期に向け、この1年は耐え忍ぶ時期ではないでしょうか。

恐らくその間にメーカーは自家消費用の様々な設備を開発するでしょうし、先進的なEPC(設計・調達・建設)企業などが自家消費の新しい事業モデルを確立し始めるでしょう。そしてコロナ禍が収束する頃には、いまよりも事業に取り組みやすい環境が整備されるはずです。気候変動対策やESG(環境・社会・企業統治)投資などの観点から多くの企業が再エネを求める傾向が続くなか、太陽光発電設備の設置コストはまだまだ下がります。お客様の電気代削減により貢献することができるようになるので、そのときに満を持して自家消費の提案を本格化するというわけです。

とはいえ、たとえば住宅用分野における防災対策として、自家消費用設備のニーズは一定程度あるように思います。これは以前からも存在しますが、とくにコロナ禍においては、不特定多数の人々が集まる避難所での感染リスクを恐れ、自宅で待機したいと考える方々が増えているからです。企業の経営者のなかにも、社員を避難所での感染リスクから守りたいという考えから、企業の施設や工場などを万が一の際の避難所にするために、自家消費用設備の導入を検討される方々がいらっしゃるようです。こうした要望には積極的に応えていくべきでしょう。

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