ファーウェイ、低圧蓄電初案件連系済み

過積載、自家消費、BCPなど用途は多彩

PCS世界最大手のファーウェイが今春発売した住宅用蓄電システムが好評を博している。しかも、住宅だけではなく、産業用低圧発電所にも適用できるというのだ。採用したのは福岡県のディベロッパ、セブンシーズだ。同社はなぜファーウェイを選んだのか。

宮崎県児湯郡で稼働した太陽光発電所の全景(左)とセブンシーズの藤塚勉社長(右)

PCS(パワーコンディショナ)とリン酸鉄リチウムイオン蓄電池、データ計測装置、専用アプリなどからなる住宅用ハイブリッド蓄電設備を開発したファーウェイ(華為技術)。2021年1月にJET(電気安全環境研究所)認証を取得し、低圧発電所に向けて初出荷したのは、4月24日に宮崎県児湯郡で稼働した太陽光発電所だった。太陽光パネルの出力が350kWと、700%もの過積載を施した低圧太陽光発電所である。発電事業者は、福岡県に本拠を構えるディベロッパのセブンシーズだ。

セブンシーズは16年に設立し、太陽光発電所の開発から施工管理、販売、コンサルティングまで幅広く手掛けている。同社の藤塚勉社長は、「東日本大震災を機に、再生可能エネルギーを普及させていきたいという思いから立ち上げました」とし、「数多くの太陽光発電所を建設してきたなか、蓄電設備を導入して、再エネの安定供給へと繋がる取り組みを加速させるべく、今回の取り組みに着手しました」と話す。

セブンシーズは、ファーウェイの出力4.95‌kWのハイブリッド型PCSと、蓄電容量15‌kWhの蓄電池をそれぞれ40台ずつ導入、計600kWh分の蓄電設備を取りつけた。発電した電力を売り渡しつつ、余剰分を蓄電設備にためて夜間などにも電力系統へ流して売電する。蓄電設備は九州で頻発する出力抑制の対策としても機能する。

藤塚社長は、「もともと他の蓄電設備を採用するつもりでしたが、計画が頓挫し、新たにメーカーを探したところ、PCSで取引のあったファーウェイさんが蓄電設備を発売したことを知り、相談したのがきっかけです」と経緯を語る。

その後、同社は複数の蓄電設備メーカーを比較したうえでファーウェイを選んだというが、蓄電設備メーカーとしては実績がないなかで、何が決め手だったのか。

藤塚社長は、「ファーウェイのPCSが非常に優れており、通信機器も含め、世界的なメーカーですから、これまで蓄電設備の販売実績がなかったことに対して懸念はありませんでした」としたうえで、「他社の製品はいずれもコンテナ型の大型設備。過積載した太陽光発電所の敷地内には設備を置くスペースがなかったのです。その点、ファーウェイの蓄電設備は太陽光パネルの下部に据え置けたので、非常に魅力的でした」と説明する。

ファーウェイの蓄電池は、5kWh1ユニットを組み合わせていく仕様ゆえ、自在な設計が可能だ。比較的小さいスペースにも設置できるほか、ユニットが各々最適に制御され、効率的な運用が実現するという。また、一つのユニットが故障したとしても、他のユニットに影響を与えることはなく、簡単に新品交換ができるため、故障発生によるダウンタイムと収益の減少を極力削減できる。しかも、重量は、PCSが19㎏、蓄電池は1ユニットあたり50㎏だから、施工に際して重機が不要になる。

さらに藤塚社長は、「蓄電池の寿命の長さも重要です」と強調する。ファーウェイは顧客に対し、10年間の基本保証を付与しているうえ、5年間の有償保証も用意しているのだ。

こうした蓄電設備そのものの特徴に加え、藤塚社長は、「完工まで終始サポートしてくれました」とファーウェイの対応にも満足げだ。実際、蓄電設備の配置や適性容量の設計はファーウェイが担っている。

藤塚社長は、「もともと使う予定だった蓄電設備の容量が800kWhだったので、同容量の設備を購入するつもりでしたが、ファーウェイから600kWhで十分だという提案をしていただきました。施工時にはファーウェイの担当者が現場で丁寧に支援してくださったのです」と振り返る。太陽光発電所が稼働してまだ日は浅いが、堅調に運転しているという。

最後に、藤塚社長は、「当社はカーボンオフセットを念頭にJ-クレジット、非化石証書、グリーン電力証書の普及活動及び企画提案をしつつ、今後自家消費やFIP(フィード・イン・プレミアム制度)を活用した発電事業、VPP(仮想発電所)事業に乗り出していきます。こうした再生可能エネルギー関連のビジネスにおいて蓄電設備は必須になるので、ファーウェイにはより価格競争力のある製品を開発していただき、今後も良きパートナーとしてともに歩んでいきたいですね」と期待を込めた。