地方行政の脱炭素戦略

[浜松市]

かねてより再エネの普及に積極的だった浜松市。〝ゼロカーボンシティ〟を目指すと宣言したが、どのような計画を掲げているのか。

静岡県浜松市は2020年3月、50年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すと宣言し、21年4月には30年までに13年度比30%にあたる171万9500tの温室効果ガスを削減する目標を掲げた。

具体的には、13年度時の温暖化対策などで18万300t削減できると見込み、残り153万9200tの温室効果ガス削減目標を部門別に策定。産業21万9000t、運輸33万900t、家庭31万8000t、業務40万600tとし、ほか廃棄物処理や森林吸収で27万700tと定めた。

さらに、二酸化炭素に関しては50年時の削減目標も公表した。13年度の排出量541万9000tのうち146万6000tを30年までに、395万3000tを50年までに削減するとしたうえで、再生可能エネルギーの導入で233万2000t、省エネルギー化や電化で133万t、森林の保全で29万1000tと内訳も示した。

もっとも、市は20年3月に50年までに市内の総使用電力をすべて市内の再エネで賄う『浜松市域〝RE100〟』を掲げている。市内の大規模水力発電の発電量が変化しないと仮定し、10ヵ所の水力発電と新設する再エネ電源で再エネ100%を目指すわけだ。

これについても、市は細かく試算し、50年時の年間使用電力量を45億kWhと推計したうえで、既存の水力発電の発電量23億3024万kWhに加え、22億1500万kWhの再エネ電力が必要だとした。しかも、出力換算で、太陽光発電を約692MW、風力発電を975MW、他の再エネ電源も含め計1.719GWの再エネ電源を50年までに導入するという野心的な目標を立てたのだ。

そして目標の達成に向け、鍵を握るのが、市が出資する自治体新電力会社の浜松新電力だ。同社は、太陽光発電所の管理・保守や省エネ支援を手掛けつつ、19年度には都市部や中山間地域の公共施設に太陽光発電設備や蓄電設備を設置し、自営線で繋いで再エネ電力を供給する8つの小規模電力網を都市部や中山間地域に構築した。20年6月にはFITの売電期間が終了した〝卒FIT〟電力の買取り単価と同額の5円/kWhを買い取った電力量に応じて小中学校へ寄付する『地域貢献プラン』を提供するなど、地域貢献を進める。地域エネルギーの賦存量を活かした浜松市の先進的な取り組みには今後も注目だ。

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