「プレミア期間が終われば、技術で勝負する時代が必ずくる」
産業技術総合研究所 太陽光発電工学研究センター 仁木 栄 研究センター長
中国勢との競争を勝ち抜くためには技術開発。プレミア価格が今年度で終わるなら、厳格なコスト勝負の世界がくる。それは、技術で勝負する時代の幕開けでもある。日本の太陽電池開発で主導的役割を果たす仁木栄センター長に、技術開発の本質を聞いた。
2017年、発電コスト7円/kWhは達成可能
いまのコストの決まり方は、技術力を反映させたものではないなと、大量購入すれば安くなる。設置のところで工夫をすれば安くなる。必ずしも、モジュールの実力で価格が決まっているわけではないと感じています。
ただ、今年度でプレミア期間が終わるわけで、厳格にコストで勝負ということになれば、技術力で勝負する時代がもう一度、必ずくる。
我々としてはその時代に備え、太陽電池の高性能化、低コスト化、長寿命化の研究開発を進めていく。日本の太陽電池技術をもう一度、世界で戦える状況にするためにも、グリッドパリティの達成が重要です。2017年に業務用電力並みとなる発電コスト14円/kWhへ、2030年には火力などの基幹電力並みの7円/kWhを達成させる。これが目標です。
23円/kWhという家庭用電力並みには確かに近づいた。だが、まだまだ道半の状況です。ただ14円は結晶シリコンやCIGS、薄膜シリコン、この辺であればクリアできるだろうと。
結晶シリコンなら、モジュール変換効率で22%を目指す。性能が22%となれば単結晶が中心になるでしょう。さらに軽量化を図り、ウエハの薄型化で目標達成させる。
まず軽量化は現状の重さを半減させたい。そこで、白板ガラスに添加されたナトリウムをカリウムに置き換えた化学強化ガラスを使って、薄く軽くする研究が進められています。ナトリウムもカリウムもアルカリ金属ですが、ナトリウムのほうがPIDを起こしやすいため、PIDの抑制にも期待できます。
ウエハ厚は最終的には100㎛を目指す。単純に誰にでもつくれる多結晶で、中国と戦うことは非常に難しい。やはり日本が持つ技術力を発揮できるモジュールで勝負しなければ。
CIGSは最近、カリウム効果が注目され始めた。これもカリウムですが、もともとCIGSは青板ガラス基盤のうえに銅、インジウム、ガリウム、セレンを製膜していくのですが、製膜の際、ナトリウムがガラス基盤から上がって、性能をあげることは広く認知されていました。
それをスイスの研究チームが、製膜が終わったあとにナトリウムのフッ化物とカリウムフッ化物の被膜を形成し、真空層のまま熱処理をすると性能が上昇することを発見した。
このカリウム効果で変換効率がこの1〜2年で上昇して、いま21%まで届いた。一方、ソーラーフロンティアは20.9%を出しましたが、彼らはカリウムを使っていないんですね。近未来的には22%、23%というレベルが見えてくるのでは。
またCIGSなど薄膜系は大型の製膜装置で製造できる。配線処理も必要なく、生産プロセスで見てもメリットがあるため、性能が結晶系に近づけば、ますます競争力があがる。
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