[有機系太陽電池]
理研、新型有機薄膜太陽電池を開発
耐水性向上、水中で動作確認
理研はこのほど、耐水性の高い新しい有機薄膜太陽電池を開発した。変換効率は14.3%を確認し、実用化に一歩近づけた。
薄くて軽く、柔軟に曲げられる有機薄膜太陽電池は、電子機器やウェアラブル端末、監視用機器の電源としての活用が期待されている。ただ、電極と発電層の間の正孔輸送層には、主に酸化モリブデンが使用されるため、水に溶けやすく、耐久性に課題があった。
この状況下、理化学研究所国際共同研究グループは、〝正孔輸送層フリー〟の新しい有機薄膜太陽電池を開発した。水中でも連続で稼働することを確認し、大幅な耐水性の向上を実現したのである。
理研創発物性科学研究センター創発ソフトシステム研究チームの福田憲二郎専任研究員は、「封止材を使うことで防水性を高めることもできるが、それでは薄くて軽いという特性が失われてしまう。薄さを維持したまま、耐水性を向上させる必要があった」と話す。
もっとも、単に正孔輸送層を取り除き、発電層に陽極の銀を直接積層すると、発電層の正孔が陽極で抽出されず、高い発電効率は得られない。だが、銀を24時間加熱処理して酸化させた酸化銀を従来の正孔輸送層と置き換えると、正孔は電極で効率よく抽出され、発電効率が上昇したのである。
理研によると、銀の加熱処理前のエネルギー変換効率は0.2%に止まっていたが、加熱処理した酸化銀を用いると、14.3%に引き上がったという。しかも、厚さ3㎛程の薄さを維持できるうえ、界面の接着力が増し、より防水性が向上したのだ。
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