メーカーの挑戦

「100㎛厚ウエハ量産機の開発を急ぐ」

コマツNTC 宮田 健章 代表取締役 専務取締役 SC事業部長

プロフィール(みやた・けんしょう) 1958年富山県生まれ。82年京都大学大学院工学研究科卒業後、トヤマキカイ(現コマツNTC)に入社。2000年SC事業部営業部長、05年理事SC事業部長、06年取締役SC事業部長、08年常務取締役SC事業部長、09年4月より現職。

2011年から当社にとって非常に苦しい状況が続いています。しかし漸く明るい展望も描けるようになった。太陽光発電の需給動向やユーザーの生産状況を見ていると、来年からワイヤソーの需要は少しずつ回復に転じる可能性も出てきました。急激な伸びは見込めないでしょうが、普通のマーケットの状態に戻ることを期待しています。

そこで今は、マーケットが回復したときに我々はどのようにして競争に打ち勝っていくか。この準備期間に何をすべきかが重要になると考えています。

同業他社との競争もありますが、今後は中国メーカーの価格攻勢にも備える必要があります。ワイヤソーもコスト競争が激化していますから。

我々は、やはり技術力で価格に対抗していくしかないと思っています。

ワイヤソーに関しては、どれだけ薄くカットできるかというのが技術の目指すべき方向ですが、単に薄くスライスできればいいというものでもありません。歩留まりや装置の信頼性が伴って初めての薄さなのです。

当社のダイヤ式の装置は150㎛厚のウエハを生産できます。スライスして洗浄工程を終えた段階での歩留まりは95%。他社製品に対する優位性は充分あると自負しています。

しかし、それでも開発の手は緩めていません。技術では1歩も2歩も先を行かなければならないので、さらに薄いウエハを生産できる装置を開発しています。

現在取り組んでいるのは、径80㎛の鉄製ワイヤにダイヤをつけて径100㎛のワイヤで切る装置です。これを実現させれば、ウエハ厚を100㎛まで薄くできる。一般に、ウエハの厚みは180㎛から厚いもので200㎛ですから、単純にウエハ厚が半分になる。ひとつのインゴットから取り出せるウエハの枚数が倍になるのです。しかもダイヤワイヤなので加工時間は2分の1に短縮される。一般のワイヤソーと比べると、大きく見積もって4倍生産性が上がることになるのです。

これはインパクトが大きいと思います。いかに中国メーカーが安い価格で販売したとしても、この開きを埋めることは難しいでしょう。

もちろんこの挑戦は容易ではない。ワイヤが細くなると、強度をいかに維持するかという課題もあります。そして一番重要なのは、ウエハを均一にカットするためにワイヤのテンションを一定に保たなければならず、そのためには微細な制御技術が求められます。

我々メーカーは、結局のところ愚直に技術を磨いていくしかないのです。

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