[第58回]
容量拠出金対策②
新電力による拠出金転嫁の現況
1kWhあたり3円以上の値上げも
では、容量拠出金を販売価格に転嫁した新電力会社の状況を見てみよう。kWあたりの単価設定で課金する新電力会社はハルエネ、HTBエナジーなどで、それぞれ1kWあたり180円、136円とした。一方、kWhあたりの単価設定で課金する新電力会社はシン・エナジー、ループ、シナネンなどで、シン・エナジーが1kWhあたり1.65円、ループは2.2円、シナネンは2.75円である。
なお、容量拠出金の算定方法は、契約電力の算定方法と近く、夏季・冬季の容量拠出金算定時間帯における電力消費者全体の負荷率が低ければ低いほど新電力会社の負担は大きくなる。このため、負荷率が低い新電力会社が電力消費者へ容量拠出金を転嫁しようとすると、1kWhあたり3円以上になる可能性もあり、ユーパワー、グローバルエンジニアリングなど同4円を超える新電力会社もあるほどだ。
1kWhあたり3円以上というのは、たとえば24年度3.49円/kWhだった再生可能エネルギー賦課金を二重に課されることに等しく、電力消費者の負担は大きい。それだけに、新電力会社の中には容量拠出金を転嫁する旨を自社のウェブサイトに掲げた後、しばらくコールセンターへの問い合わせが殺到して、パンク状態になったところもあったという。
もっとも、新電力会社にとっても電力消費者に転嫁することは決して安易でも容易でもない。事実、ある地域新電力会社の社長はこう窮状を訴える。
「22年度のJEPX価格の高騰で大きな打撃を受けたうえに、容量拠出金を自社で負担するのは正直不可能だ。24年度の容量拠出金の負担額は粗利の50%にものぼる。電力消費者に容量拠出金を転嫁せざるを得ないのが実情だが、電力消費者からは、容量拠出金を転嫁するなら転嫁しない新電力会社に切り替えるという電話が後を絶たない」。
容量拠出金の負担が大きいため、顧客からの信頼喪失のリスクと引き換えにやむを得ず転嫁する新電力会社が少なくないのだ。このほかも、中小の新電力会社から苦慮する声が上がっている。
中堅新電力会社の電力事業部長が「顧客の問い合わせに対し、たとえば再エネ賦課金は国の政策だと説明すれば良いが、容量市場や容量拠出金の単価の設定方法などは説明しても理解してもらえない」と語れば、地域新電力会社の電力事業部長は「容量拠出金の算定方法や転嫁する価格が各社異なるため、『適当な理由で不当に利益を得ようとしている』と顧客に疑われ、消費者庁に駆け込まれたこともある」と漏らす。
ともあれ、自社の損失補填のために容量拠出金の負担という大義名分で、高額な容量拠出金単価を設定する新電力会社も存在することは想像に難くない。それだけに1件でも「不当値上げ」が取り沙汰されれば、新電力会社の信頼は大きく損なわれかねない。そしてこの容量拠出金の転嫁、実は今後の電力自由化の進展に大きな影響を及ぼすといっても過言ではないのだ。
次回は、容量拠出金の負担軽減策について考察していく。