日本写真印刷
色素増感太陽電池を用いたオフグリッド照明器具発売
日本写真印刷(京都市中央区、鈴木順也社長)は9月より、色素増感太陽電池(DSC)を使用したオフグリッド照明器具の発売を開始した。同社にとってDSCの商用化は初めて。
今回発売したのは島根県産業技術センターと共同開発したDSC『エネリーフ』、LED、蓄電池などで構成されるオフグリッド照明器具『AKARIE』。日中にDSCで発電した電力を蓄電池に貯蔵し、夜間にその電力を使ってLEDを点灯させるというもの。晴天時約2時間の充電により、LEDの点灯時間はおよそ15時間になるという。LEDの輝度は10カンデラ、設置時の電気工事も不要。希望小売価格は20万円(税抜)。
最大の特長はシースルータイプのDSCを採用していること。DSCとは、植物が光合成を行っている原理に近いメカニズムで発電する太陽電池。光エネルギーをシリコンではなく、色素を使って発電するもので、セルは色素のほか、ガラス基板や透明電極、封止材、電解液や酸化チタンなどで構成されている。
主な特長は、両基板にガラスを用いてシースルー型を製造可能な点やカラーバリエーションが豊富な点から意匠性が高いこと。また、200〜300ルクスの低照度でも発電することに加え、斜光特性も強いため、設置場所や設置角度の自由度が高い。
同社は、片面受光型DSCの場合、変換効率6.7%(12㎝角)を実現しているが、今回はシースルータイプということもあり、変換効率は約4%となっている。
事業開発部技術開発グループの坂根正恭グループ長は、「新製品はシースルーを活かし、意匠性が高いことが最大の特長だ。DSCのデザインはカスタマイズできるうえ、途中でデザインの変更も可能なので、その季節に合ったデザインを採用することもできる」と語る。なお、『AKARIE』では、赤色系及び黄色系の色素を用いたデザインが可能となっている。
なお、『AKARIE』は、すでに横浜市神奈川区の王将フードサービス東神奈川駅西口店に誘導灯として、6台設置されており、中小規模店舗の照明用や、自治体などの非常用照明向けにも提案していく方針だ。
同社は2008年に以前からDSCの研究開発を進めていた島根県産業技術センターとの共同開発をスタート。10年初めからはサンプル出荷も開始し、11年には量産検証ラインを導入している。
今後について坂根グループ長は、「最大の特長である意匠性を維持しつつ、性能や信頼性を向上させるように開発を進めている。シースルータイプで変換効率10%は一つのターゲット」としている。
また、事業開発部マーケティンググループの村田樹一グループ長は、「DSCを使った様々なアプリケーションを、共同開発も含めて、開発していきたい。まずは初めて商用化した『AKARIE』を拡販していく」と語り、2014年度に売上高2億円、販売数量1000個を目指している。