波紋呼ぶ劣化現象 PIDとは何だ

太陽電池の発電機能を奪う未知なる劣化メカニズムに迫る

太陽の光を燦々と浴び、その光を素子によって電気エネルギーに変える。太陽電池が持つこの発電機能が、ある特殊な環境条件下。高温多湿でガラス表面が水分で覆われ、これに高電圧ストレスまで揃うと瞬く間に失われてしまう。
Potential Induced Degradation──電位によって誘発された劣化と直訳されるPID現象がそれだ。このPIDの恐ろしさは外観的な症状をまるで持たず、一度でも罹患すれば、パネルから100%近くもの発電機能を奪い去りかねない。その感染性の強さにある。
全量買取り制度が始動したいま、発電事業者へ経済損失となって覆い被さるPIDが、ここ日本でも大きな波紋を呼ぶ。だが、可逆性という性質から劣化ではないとする意見や、あるいは「PIDはもはや解決済みだ」とし、一過性のブームに過ぎないとの見解もある。
時間軸のかけ違いなのか、PIDを巡る議論はときに平行線をたどる。その最大の原因はいまだ究明されぬ劣化メカニズムにあるのではないか。なぜなら、原因解明なくして終息もまた永遠に訪れないからだ。
発電機能を消失させるPIDとは一体何なのか。未知なる謎に迫る。

FIT史上、最も危険な劣化

「太陽電池にとってPIDとは予想を超えた現象であって、いまも何ら対策が取られぬままのモジュールが市場に流れているんですね。やはり、劣化メカニズムの究明にたどり着いていない。これが最大の問題であり、究明されたのちに根本的な解決に向かうはずです」。

こう語るのはPIDに造詣深い、ケミトックスPV試験評価事業部の坂本清彦部長だ。さらに「もうひとつ、直面する課題がすでにフィールドに並んだパネルです。確かに解析し対策すればその時点から、開発や製造といった部分からの問題は消えるでしょう。だが市場にはPIDは残り、燻り続けるわけです」。

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