12年出荷量1GW突破も2年連続赤字
「市場の健全化に値上げは必要」
ジンテック・エナジー 潘 文輝(Wen-whe Pan)総経理
台湾の太陽電池セル大手、ジンテック・エナジーは、2012年のセル出荷量が前年比32.9%増の1.1GWに達した。だが、供給過剰によるセル販価下落の煽りを受け、営業損益は11年に20億44百万台湾ドルの損失を計上したのに続き、12年も赤字の見通し。いかにして赤字脱却を図るのか。
「12年は11年に比べて変化の激しい1年だった」。
ジンテックの潘文輝総経理は、そう振り返る。
「米国による中国製セルに対するAD(アンチダンピング関税)とCVD(補助金相殺関税)の裁定は、台湾セルメーカーにとって、プラスに作用した。その一方で、オーバーサプライが需給バランスを崩し、価格に悪影響を及ぼしている」。
同社の12年末のセル年産能力は1.2GW。当初は1.5GWへの増強を計画していたが、市場環境を鑑み、現状維持で落ち着いた形だ。ただし、アンチダンピングの影響でセルの引き合いが増加するなど、決して需要が低迷していたわけではなかった。
「この1年間はほとんどフル稼働だった。他社の工場稼働率が50%程度に落ち込んでいたときも、当社は80〜90%を維持していた。3Q(12年7〜9月)からは、米国のAD・CVD裁定の影響で、出荷量が伸び始めた」。
12年末からは需要がさらに拡大、生産キャパを超えるほどの注文が殺到しているという。
「当社は、すでに世界中のパートナーとのネットワークを構築し、コストや品質において競争力のある製品やサービスを提供している。たとえば、日本には、PID対策を施したセルを供給しており、その点で評価していただいている。それに加え、ADによる影響で出荷は伸び、日本市場の成長も寄与している」。
12年の出荷量は前年比32.9%増の1.1GW。地域別では日本40%、米国25%、中国25%となり、3つの市場が多くを占めた。
しかし、出荷量は伸びたものの、市況軟化の影響を受け、営業赤字を解消するには至らなかった。2年続けて営業損失を計上し、同社にとって今年が正念場となる。
「取引価格は様々な数字が出ているが、安価で市場に供給しているものを含むため、実際の価格よりも若干低い。今は市場のデマンドも強く、価格は上昇局面に入っている」。
「しかし昨今、世界の名立たる太陽電池企業が赤字体質に苦しんでいる。セルだけでなく、ポリシリコンからモジュールまで。ブレイクイーブンでないということはすなわち、今の価格レベルは適正ではないというわけだ。赤字脱却のためには、低コストかつ高品質を実現することに加え、適正な価格に引き上げる必要がある。中国勢も変化し始め、需給バランスの正常化へ動いている。健全な市場に戻さないといけない」。
「3、4年前にモジュールが6割、それ以外のBOSが4割だったシステムの価格構成は、今やモジュールが2割程度。8割を占めるBOSこそ、よりコストダウンを進める必要があるのではないか。わずか2割のモジュールだけにコストダウンを求めることは不合理であると思う」。
その市場の健全化のために、潘総経理は〝シェア〟の必要性を強調する。
「どの産業でも同じことだが、お互いにシェアしていくことが大切だ。太陽光でいえば、台湾はセル、中国はモジュール、日本はシステムといったようにマッチした事業分野がある。我々台湾企業は、政府からの補助を受けずに競争力を強化しているが、産業が歪んだままでは到底やっていけなくなる。正常な市場に戻すためにも、お互いにシェアしていくべきだ」。
赤字脱却を目指す13年は、年産1.3GW体制での出荷量1.3GWを目標に据える。
「日本、米国、中国市場は今年も成長し続けるはずだ。3カ国の合計は12年比2倍の20GWになると予想している。グローバルでもおよそ30GWだった12年に対し、13年は35GWに拡大するとみている。生産能力イコール出荷量にし、黒字転換を実現する」。