架台施工不良で連系できず 施工店とメーカーが大揉め
長野県の太陽光発電所で架台の施工不備が発覚し、系統連系が見送られることになった。施工会社と架台メーカーが揉めている。
件の太陽光発電所は、長野県信濃町内に建設された出力213kWの高圧太陽光発電所だ。施工したのは、地元の建設会社、藤沢電気工業(長野県須坂市、藤澤一彦社長)。系統連系を控えた今年6月、電気保安協会の検査で架台の施工不備が発覚し、同社は保安協会から改修するよう奨められた。
この電保協からの指導には法的な拘束力はないが、無視して売電を開始し事故が起これば、産業保安監督部への通達案件となる。設備の改善が求められ、改修期間中の売電収入が失われるため、施主である発電事業者の判断で、系統連系は一時取り止めとなった。
現在、現場は設備の交換を待つ状況だ。テンフィールズが固定式の架台を提供し、400万円を返金する方向だったが、藤沢電気は同社の一連の架台の構造計算書に不備があると主張。見解は食い違い、連系はできないままだ。藤沢電気は自ら1300万円余りを負担し、別のメーカーの架台を採用する考えのようだ。
この太陽光発電所は、架台の支柱とスクリュー杭の間隔が合わず、鉄骨の梁を介して繋げている状態だった。単管パイプやワイヤで補強されていたが、現地は豪雪地域。電保協は外観上強度に不安があると判断したのだろう。しかしなぜこのような状況に至ったのか。
藤沢電気が施主から受注したのは2018年の春頃だ。同社はテンフィールズファクトリー(京都府精華町、市川裕社長)製の可動式架台を採用し、県内でコンクリート基礎を製販するアーマン(東京都渋谷区、武藤多加志社長)を通じて発注。だが、予定よりも納期が遅れ、18年10月下旬にスクリュー杭を、11月下旬に架台をそれぞれ受け取った。
藤沢電気は10月下旬から杭の施工を始めたが、本来1700ピッチである杭の間隔を、2200ピッチと誤認していた。アーマンの武藤和洋事業本部長は、「発注当初から計算書には1700ピッチと記載があり、藤沢電気にも渡している」と話すが、藤沢電気側は、アーマン営業部の宮川和弘課長から2200ピッチと伝えられたともいう。真相は定かではないが、藤沢電気は工期が遅れていたこともあり、施工済みの杭を使って工事を進めた。
トラブルはこれにとどまらない。藤沢電気の藤澤一輝取締役部長によれば、昨年末に架台の施工を終え、冬場の積雪を経た今年3月に現場を確認すると、3分の1程の架台で角度を変えるための歯車状の凹凸が削れ、使用不能になっていた。
これについて、テンフィールズの市川社長は、「当社の予想を上回る積雪があったためだろう」としているが、藤沢電気の藤澤取締役は、「春にパネルを設置したが、可動部が明らかに弱そうなので補強材を入れた。5月ごろに施主やテンフィールズの立ち合いのもとで試しに補強を外すと、自重で可動部の凹凸が削れ、壊れてしまった」と話す。その後、市川社長から、角度を変えずに使用するための対応について提案を受けたという。
ならば、架台そのものの強度が不足していた可能性もあるが、こうした経緯で太陽光発電所が建てられた。