国内大手が住宅用蓄電池から撤退
NECに次いで東芝も
コモディティ化の波
しかし、見方を変えれば、東芝とNECは、コモディティ化による価格競争から脱落したともいえるだろう。
現在の住宅用蓄電池市場は、認証の問題もあり、海外メーカーが参入しづらい状況だ。過去の蓄電設備への補助金に関しても「蓄電設備は日本製だが、蓄電池が海外製という理由から補助金が打ち切られた」と推測する者もいたほどで、日本メーカーを守るために海外勢を締め出す傾向がある。
しかしそれも限界だ。今年、台デルタ電子が海外勢では初めて住宅用蓄電設備でJET認証を取得し、日本で販売を開始。デルタを皮切りに今後多くの海外勢が参入してくるはずだ。価格競争が激化するのは必至で、どこが勝ち残るのか目に見えている。両社が違う土俵で戦うという判断を今のうちに下すのは、ある意味理に適っている。
蓄電池市場に詳しい三菱総合研究所エネルギーシステム戦略グループの長谷川功主任研究員は、「価格競争では部が悪いので、日本企業は、サービスや技術力で勝負できるよう、準備を進めている」という。
たとえば、ここ数年、破竹の勢いでシェアを伸ばす伊藤忠商事は、今年に入ってAI(人工知能)技術を活用した蓄電事業を展開する英企業と提携し、最適制御の取り組みに着手した。
他にも、蓄電設備を活用して電力を融通し合うVPP(仮想発電所)の実証試験は、NECや電力会社を中心に着実に進んでいる。
パナソニックをはじめ、トヨタや日産自動車、村田製作所などオールジャパンで進める全固体蓄電池の開発は、対海外勢を想定して、価格勝負に巻き込まれないための奥の手ともいえる。