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北海道大停電で見えた太陽光発電の意義と課題

メガソーラーを非常時に役立てよ

ただ、太陽光発電の課題も、停電を通じて見えた。系統に連系している場合、たとえ発電設備が無事でも、肝心な時に電力を利用できないことだ。

そもそも太陽光発電所は地震に強く、敷地が土砂崩れに見舞われる事態ならばともかく、揺れだけで設備が損壊することは稀だ。実際、苫東厚真発電所の惨状に反し、隣接する安平町にあるパネル出力111MWの『ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク』は無事だった。現場管理を行う東芝エネルギーシステムズエネルギーアグリゲーション統括部再生可能エネルギー技術部の堀切毅現場代理人は、「地面に多少の亀裂はあったが、設備は全く問題なく稼働している」と胸を張る。

しかも、同発電所は北海道最大の太陽光発電所だが、それでも出力は苫東厚真発電所の10分の1にも満たない。太陽光発電所は小規模分散型電源であり、地域内に点在しているため、仮に一部が停止しても、一定の供給力は維持できる。

だが、現在の電力供給システムの下では、周囲の系統が停電すると、太陽光発電所も送電を止めなければならない。事実、安平市に13.5MWの太陽光発電所を持つパスポートの担当者は、「停止した苫東厚真発電所が系統の周波数調整を担っていたため、調整力が確保されるまで、道内のメガソーラーは送電できなかった。設備は問題なかったが、送電再開が14日午後まで遅れた」と嘆息する。

望まれるのは、既存の電力供給システムに拠らない太陽光発電の利用法だ。通常は電力会社への売電を行うにせよ、非常時に無駄となる電力を近隣へ供給できれば、大規模発電所からの送電が止まっても、周辺は日常に近い生活を送ることができるだろう。延いては、平常時から周辺地域に電力を供給する地産地消の仕組みを構築する足掛かりになるのではないか。

これは、昨今各地で起こる太陽光発電所建設への反対運動にも、ひとつの妥協点を示すはずだ。FIT売電だけを前提とした発電事業は周辺の地域に利益を生み出さないが、太陽光発電所が非常時の地域の電源として役立つならばどうか。失われつつある太陽光発電の社会的受容を取り戻す契機となり得るに違いない。

発送電の仕組みを変革することは容易ではないが、今こそ真の電力システム改革を目指し、官民を挙げて取り組むべき時である。

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