市議会で6度見送りも
美作市長、パネル税に意欲
岡山県美作市が導入を検討している太陽光パネル税。市議会では6度に亘って見送りとなったが、萩原市長は導入に意欲的だ。一方で事業者からは根拠を求める声が上がる。(本誌・岡田浩一)
地上に設置した太陽光パネルの面積1㎡あたり年間50円を少なくとも5年間発電事業者から徴収するという太陽光パネル税。岡山県美作市が新設を進めている。
導入されれば、市内の出力10kW以上の地上設置型太陽光発電所は原則、既設の設備も含めて課税の対象となる。事業者は、低圧太陽光発電所1基あたり年間最大約1.5万円の税金を負担しなければならなくなる。
パネル税の発案は、水防法の改正に伴い岡山県が災害想定を変更したことがきっかけだったらしい。県は2018年3月に吉野川流域における24時間の最大降雨量の想定を従来の3倍近い600㎜程まで修正し、美作市など4市町では防災対策を講じる必要が生じた。
その際、美作市は、雨天時に太陽光発電所からの落石が多いなどの事象から「太陽光発電所は流下能力に対する負荷をかけている」(萩原誠司市長)と判断したようだ。ただ、事業者に対策を求めるのは非現実的として、「市が防災工事を実施し、費用を事業者に負担してもらう」(萩原市長)というパネル税の導入を検討したという。
市は、パネル税を条例で新設できる法定外目的税として導入するつもりだ。実現すれば、年間約1億円、向こう5年で約5億円の税収が見込める模様で、徴収した税収を治水対策など太陽光発電事業によって発生し得る防災対策費や環境調査などに充てる構えである。
ただ、パネル税案は市議会を通過しておらず、まだ成立していない。市は19年6月の市議会に議案を提出したが、必要資料が集まらず議論が深まっていないという理由から継続審査となり、19年9月、12月、20年3月の市議会でも、事業者からの質問に対する市の回答が遅れたために意見書が間に合わないといった経緯などもあって見送られた。一方で市は総務省から小規模事業者にも情報を提供するよう指摘され、事業者や市民への意見交換の場を設けたが、コロナ禍で機会を失い、20年6月の市議会では廃案に。9月には田であった土地に設置された低圧太陽光発電所を課税対象から外すなど内容を修正して再度臨んだが、いまなお継続審査中である。
それでも、萩原市長はパネル税案の導入に意欲を示し、「審査に時間がかかっているが、(パネル税案に対して市議会議員の)賛成意見は多い」と語るのだ。