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活況の蓄電所開発

手厚い補助金が牽引役に

国の補助金予算を早々に使い切るなど、系統用蓄電所開発が活況を呈している。この状況はしばらく続きそうだ。(本誌・楓崇志)

系統用蓄電所の開発が本格化し、実運用を開始する蓄電所が出てきた。再生可能エネルギー系IPP(独立系発電事業者)大手のパシフィコ・エナジーは福岡と北海道で建設していた蓄電所をこのほど竣工し、6月から市場取引を始める。いずれも高圧規模の蓄電所であり、同社のベヘラネゲラド・マハディ蓄電池事業開発部門長は、「まだ制度設計の途上だが、知見を深めるためにも実運用していく」と話す。

こうした蓄電所の開発が盛んな理由の一つは国による手厚い導入補助金だろう。定格出力が1MW以上10MW未満では3分の1、10MW以上であれば2分の1と補助率は高く、収益予測の蓋然性に限界があるなかで、補助金制度が開発促進の施策として機能しているのだ。事実、先述のパシフィコ・エナジーも、国の補助金を活用していた。

国の支援は続いており、2023年4月20日には22年度補正予算分の採択結果が公表され、15件の系統用蓄電所案件に補助金の交付が決定した。国は当初3次公募まで行う予定だったが、今回の1次公募で約170億円の予算を消化した。

22年度補正予算分からは、『レジリエンス』の観点が盛り込まれ、事業者が調達する蓄電設備のメーカーが、国内にサービス拠点を有していることや、国内に蓄電池セルやパワーコンディショナの製造ラインを持つことが審査項目に加えられた。経済安全保障を重視する動きが活発で、国は国内メーカーの蓄電設備の採用を後押ししたようだ。

実際、蓄電池国内大手のGSユアサには引き合いが殺到したようで、同社産業電池電源事業部事業企画本部事業戦略部の中本亘部長は、「23年度は、前年度比約3倍に及ぶ蓄電池の出荷体制を確保したが、それを超えるほどの引き合いがあった」と明かす。

系統用蓄電事業に本腰を入れる伊藤忠商事は22年度補正予算で大阪ガス及び東京センチュリーとの共同事業で採択された。大阪ガスグループが大阪府吹田市に所有する土地に出力11MW、蓄電容量2.3万kWhのリチウムイオン蓄電設備を設置する。伊藤忠商事は設備の供給や保守などを担う予定で、25年度上期の運転開始を見込む。

同社は大型蓄電設備や制御を担うEMS(エネルギー管理システム)の供給から運用まで一括して支援できる体制を整備済みだ。大阪ガスらとの案件以外にも子会社のアイビートが東急不動産子会社のリエネとの共同事業で採択されたほか、23年6月1日には別の経済産業省の補助金を活用した蓄電所の運用を開始したと発表。兵庫県豊岡市でカネカグループらと地域マイクログリッド事業などを実施するというもので、電気自動車用の再使用電池を使った出力1.9MW、蓄電容量6000kWhの蓄電所を建設した。

伊藤忠商事エネルギー・化学品カンパニー電力・環境ソリューション部門次世代エネルギービジネス部の道野僚太統括は、「一気通貫のサービスに限らず、部分的な支援や出資をしながら知見を深めていく」と語る。

もっとも、国の22年度補正予算に続き、23年度予算や東京都の補助金公募も締め切られ、関係者の関心は次年度以降の補助金を見越した案件開発に向かっている。GSユアサの中本部長は、「すでに次年度の商談は始まっており、今でも供給可能量の10倍ほどの引き合いがある」という。

伊藤忠商事は系統用蓄電事業を一括支援可能な体制を持つ。写真は兵庫県豊岡市に設置された系統用蓄電設備

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