強度2倍超!
厳格JISが義務化へ
厳格な新JIS(日本工業規格)の設計基準が義務化される。経産省が年内に関係省令を改定する。架台には従来比2倍超の設計強度が要求され、建設費の増加は避けられそうにない。
太陽光発電設備用の基礎・架台に対して、設計用荷重の算出基準を示した『太陽電池アレイ用支持物設計標準(JISC8955)』。2004年の制定後、11年の改定を経て、昨年3月に刷新、『太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法』に名を変えた。
旧JISはFIT施行前の主に屋根上の太陽光発電設備を対象につくられたもので、FIT後の地上設置型設備を想定していなかった。そのうえ、相次ぐ太陽光発電所の倒壊事故も背景にある。そこで、内容が見直され、高い設計強度を求める厳格な新JISに改訂されたのである。
なかでも、設計用風圧荷重の算出法の変更が大きかった。従来は、架台のみ設計用風圧荷重を算出すればよかったが、新JISでは、架台だけでなく、架台を構成する部材までそれぞれ風圧荷重を算出しなければならない。しかも、風圧荷重を求める際に用いる風力係数の計算式が大幅に変えられたのだ。例えばパネルの傾斜角30度で設備を地上に設置した場合、正面から吹く風に対する風力係数は従来の約1.7倍になる。
さらに新JISでは、地表面粗度区分の記述も変更された。地表面粗度区分とは、地表の状態が風に及ぼす影響の度合いを指し、設計用風圧荷重の算出に用いられる。旧JISでは、2000年の『建設省告示第1454号』を引用し、下図のように求められる強度順にⅠ〜Ⅳに区分けしていた。
区分Ⅰは特別な開発制限がなく、市町村長や知事が指定する平坦な土地、区分ⅡはⅠ以外の開発制限がない土地、もしくは海岸線・湖岸線から一定以内の距離にある土地、区分ⅢはI、Ⅱ以外で、区分Ⅳは都市部だ。
ここで、旧JISには、区分Ⅱの規定のなかに建築物の高さが13m以下の場合は除くとの記述があったため、旧JISのもとで地上設置の太陽光発電所を建てる際、ほとんどが区分Ⅲを適用すればよかった。
しかし、それでは設計用風圧荷重が低く算定されかねないとの批判があって、新JISでは建築物の高さを限定する記述を削除、区分Ⅲよりも厳しい区分Ⅱを参照しなければならなくなった。区分Ⅲと区分Ⅱを比較した場合、ⅡはⅢの1.5倍の強度が必要になる。
むろん、設計用風圧荷重は設置の仕方や環境によって必要な値が異なるが、旧JISからの変更を考慮すると、新JISの設計では、概ね2倍超の設計用風圧荷重が要求される。
確かに、新JISを義務化し、基礎・架台の強度を高めれば、事故のリスクは減るだろう。だが、基礎・架台の原価は嵩む。事実、「新JISに対応する製品をつくると、原価は2倍近くに跳ね上がる」(架台メーカー筋)という声もある。
まして、来年度は出力10超の売電単価が18円に減額される。事業化のハードルが格段に上昇しかねない。発電事業者やEPC(設計・調達・建設)業者にとっても見過ごせない問題だ。
とはいえ、新JIS設計はいまのところ義務ではない。『電気設備に関する技術基準を定める省令』の技術要件、電技解釈(電気設備の技術基準の解釈)の第46条第2項には、04年版JISの設計強度を備えていればよいとある。それだけに、04年版JISで設計するようEPC業者に依頼し、建設費の低減を図る発電事業者が大半だったようだ。