デンカシンキの失敗と挑戦
新電力、第3者所有のリスク露見
投資家探しに難航
2つ目は、16年10月に同社が始めた太陽光発電設備の無料設置事業である。一般に第3者所有モデルと呼ばれるもので、かつて米国で流行したものと同じだ。
仕組みはこうだ。デンカシンキが投資家を募って資金を調達し、一般住宅の屋根に太陽光発電設備を設置する。住人は使用電力量分の電気代をデンカシンキに支払い、デンカシンキは電気代の一部と売電収入から投資家に利益を還元する。
木村社長は、「太陽光発電設備の販売数が減少していたので始めた。無料設置の1件あたりの利益は従来の3分の1になるが、3倍売れる商品だった」と説く。
ただ、無料設置事業は資金調達が課題だ。というのも、1件の無料設置に設備導入費が150万円かかるとすると、契約を100件結ぶには1.5億円の資金を事前に用意しなければならない。投資家が多数参加し、資金が潤沢にあればよいが、難航する場合が大半のようだ。事実、米国では、第3者所有モデルで多くの企業が失敗し、いまでは衰退してしまっている。
ただ、木村社長は「電力は地産地消が一番よい。家で発電すれば電線も不要。近所同士で電力を融通できれば効率的だ。無料であれば、設置する大きなきっかけとなる」と意義を語る。
そして同社は、個人投資家を募って資金集めに奔走、約1年で8億円弱、500棟分の出資を受けた。それでも、木村社長は「投資家探しが大変。無料設置を成立させるために設備費をかなり抑えたが、投資家を紹介してくれた企業への手数料を支払ったり経費を計上したりすると、手元にお金が残らない」と苦境を語る。
個人投資家を1人ずつ探すようでは効率が悪いため、同社は企業からの大口出資を募ったが、「ことごとく利益率が低いという理由で断られた」(木村社長)。
そこに事業計画認定の遅れが直撃。契約済み案件の売上げも立たず、業績は悪化する一方だった。