出光、レノバらが兵庫で蓄電所建設へ
国内初のプロファイ組成
出光興産やレノバらは、事業の収益を返済原資とするプロジェクトファイナンスを活用して兵庫県内に系統用蓄電所を建設する。系統用蓄電事業のプロジェクトファイナンスの組成は国内で初めて。(本誌・楓崇志)
出光興産とレノバ、長瀬産業、三井住友ファイナンス&リース子会社のSMFLみらいパートナーズの4社は2023年8月1日、共同出資の合同会社を通じ、兵庫県姫路市で系統用蓄電事業を実施すると発表した。合同会社への出資比率は、出光興産が51%、レノバと長瀬産業がそれぞれ22%、SMFLみらいパートナーズが5%である。
新会社は、兵庫県姫路市内の出光興産兵庫製油所跡地に出力15MW、蓄電容量4.8万kWhの系統用蓄電池を23年度内に設置し、系統連系工事などを経て25年10月に商業運転を始める。総投資額は非公開としたが、経済産業省による系統用蓄電池向けの補助事業に採択されており、約15.9億円の補助金を受給する模様だ。
出光興産は土地の提供のほか、蓄電所の運用や電力市場取引、メンテナンスを、レノバは蓄電所のエンジニアリングや資金調達、合同会社の運営をそれぞれ行う。長瀬産業は蓄電池関連の技術支援を手掛け、SMFLみらいパートナーズはファイナンスの組成を主に担当する。4社はEPC(設計・調達・建設)業務を日揮に委託し、GSユアサ製の蓄電池と、東芝三菱電機産業システム製のパワーコンディショナを採用する。
最大の特徴は、国内で初めて系統用蓄電事業のプロジェクトファイナンスを組成したことだろう。というのも、市場取引で収益を得る系統用蓄電事業においては、事業の予見性が低く、20年の固定収入を得られる『長期脱炭素電源オークション』でも利用しない限り、プロファイの組成は難しいと言われてきたからだ。
レノバ財務・経営企画本部財務部コーポレートファイナンスグループの鹿瀧真グループ長は、「シンクタンクをアドバイザーに、想定し得る制約を踏まえて収益見通しを綿密に分析し、蓋然性の検証を深めた」と振り返りつつ、「長期稼働を担保するため、蓄電池の運転パターンの設定や劣化率保証の条件整理など、プロファイ組成を念頭にメーカーと交渉を進めた」と語る。
もっとも、SMFLみらいパートナーズは、レノバが開発したバイオマス発電所や風力発電所といった再生可能エネルギー発電事業向けにプロジェクトファイナンスを組成し、融資してきた経緯がある。自ら再エネ事業を多く手掛けているうえ、蓄電事業にも関心を持っていたようだ。
SMFLみらいパートナーズ環境エネルギー本部環境エネルギー開発部の前田成惟上席部長代理は、「国内で前例のない事業へのプロファイだったが、シンクタンクと協力し、踏み込んだ分析を行った。確かに不確定な要素は残っているが、納得できるまで議論を尽くした」と話す。