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現地ルポ

九州北部豪雨でメガソーラーが一部損壊

7月5日から6日にかけて降り続いた大豪雨で、九州北部は各地で深刻な事態に見舞われたが、太陽光発電所にも被害が及んだ。現地の状況を追った。(本誌・中馬成美)

「こげんなったとは、初めてやけん。今回ばっかしはもうダメやね」。

福岡県朝倉市杷木林田地区の赤谷川近くで建築板金業を営む大内田博さん(68)は、ため息交じりに当時の状況を語った。大内田さん宅の壁2m程の高さにこびりついた土砂の跡から大量の水が流れ込んできたことが伺える。

赤谷川は、福岡県を流れる筑後川水系の支流だ。7月5日の午後から水かさが急激に増し、氾濫。周辺一帯は洪水に見舞われた。上流付近の浄水場が流されたため、杷木林田地区は断水が続いていた。

「営業は当分無理やね、水がないけん、洗おうにも洗えんとよ。どうしようもないっちゃんね」と大内田さん。表情は晴れないが、しっかりとした足どりで作業場の片づけに戻っていった。

記者が現地を訪れたのは7月13日。記録的豪雨とは対照的に太陽が照りつけ、じっとしていても汗が滴る真夏日だった。

朝倉市杷木地区では、山積みになった土砂の間を自衛隊車両が行き交い、道路脇には地元住民が撤去作業に勤しんでいる。馴染みある九州の変わり果てた光景に、胸が締めつけられる思いがした。

「全面通行止め」の標識が、先へ進むのを躊躇わせたが、道路が寸断され、多くの世帯が孤立した朝倉郡東峰村へ向かう。途中渡った橋の欄干には流木が大量に挟まっており、大量のが一気に流れ込んだ様子が目に浮かんだ。

生々しい爪痕が残っていたのは、特別養護老人ホーム宝珠の郷だ。ここは一時160人が孤立した緊急避難所。すぐ近くの山で土砂崩れが発生し、道路が塞がれてしまったからだ。宝珠の郷で生活相談員を務める森山茂生さんは、5日夜の様子をこう説明する。

「夜10時くらいですかね、どどどっと、ものすごい音がしました。最初は雷かなと思ったけど、車のハザードランプの光で土砂崩れだと分かりました。朝になって見ると、フェンスの向こうにあった林がない。電車のレールもない。愕然としましたね」。

避難所には6日朝に自衛隊が到着し、孤立状態は解消された。幸い人的被害はなかったものの、13日時点でも断水が続いていた。

東峰村には、EPC(設計・調達・建設)国内大手ウエストホールディングスが所有する1.9MWのメガソーラーがある。付近では道路が一時通行止めになり、孤立した人が救助されたという。それだけに、メガソーラーにも甚大な被害が及んでいるのではないかと想像したが、意外にも被害は大きくなかった。

メガソーラーの門扉には流木などが散乱し、一部地盤が崩落してパネルが流されていたが、大きな損壊は見られなかった。ただ、停電のため、「現在(14日)も発電は停止した状態が続いている」(ウエストO&M幹部)。

大分自動車道の朝倉インターと杷木インター間にある山田サービスエリア下り線にも1MWの太陽光発電所がある。途中車を止めると、法面の一部がブルーシートで被われていた。発電所を所有する西日本高速道路によると、「発電所そのものには損壊はなく、法面で一部土砂が流出したので養生している」という。

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