観光地で進むメガソーラー計画に住民が反発
拭えぬ不信感
3年前から計画されていたメガソーラープロジェクトが地域住民の知るところになったのは最近だという。5月21日の伊東市長選挙に際し、候補者の2人がともにメガソーラーに反対の姿勢を示したのだ。以来計画の内容を知った住民が反対運動を展開。プロジェクトは紛糾している。
地域住民が反対するのは、大規模な森林の伐採による生態系への悪影響や景観の破壊、豪雨時に河川へ流れる雨量の増加や土砂崩れ、除草剤による海洋汚染などを懸念するからだ。住民の不安は当然だろう。
ただ、合同会社側も明確な対応策を提示している。
まず、観光地という土地柄、景観には特に配慮し、敷地境界の内側に30m以上の森林を残す。敷地内に生息する希少生物のうち、移植可能な種は前出の森林区域へ移し、その後の調査で生育、生息を確認。希少野生生物の調査に2年8ヵ月を費やしたという。
また、可能な限り土地の傾斜を生かして架台を組み、造成によって出た土砂を構外には搬出しない。除草剤は使用せず、代わりに横に伸びて根を張る被服植物を植え、除草対策に取り組みつつ土砂崩れの防止も図る。
さらに、豪雨時における洪水・土砂崩れ対策として敷地内に幅275m×45m、深さ4〜5mの調整池を2ヵ所設けるとともに、調整池にろ過装置を取付け、浄水した上で川へ流す計画を立てているという。
念入りに調査を実施したうえ、リスクへの詳細な対応策を示しているといえる。
にもかかわらず住民が反対するのはなぜか。まず大多数の住民はハンファエナジージャパンとシリコンバンクを知らないはずだ。見ず知らずの相手からの突然の話を鵜呑みにはできず、不信感を抱いているのであるが、合同会社の説明が充分だったかといえば、そうともいえない。
5月27日に地元のコミュニティセンターで開かれた住民説明会。質疑応答の際、住民からこんな質問が出た。
「辻褄がすべて合うような都合のいい説明をしているが、ではこの説明が正しいとどうやって保証してくれるのか」。
配布された資料には、プロジェクトに要する総事業費や資金調達計画、売電単価が記載されていなかった。説明資料には、「事業費に撤去処分費用を織り込んで算出しており、事業開始時からその費用はストックされている状態」とあるにもかかわらず、合同会社の資本金すら記されていなかった。これでは説明不足を指摘されても仕方ない。
先の住民は、「資金計画が最も大事な説明であるはずなのに、それが書かれていないので信用できない。子供だましの説明会はやめた方がよい」と憤る。