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観光地で進むメガソーラー計画に住民が反発

3年の運開期限が焦りを生む

とはいえ、合同会社は何ら法に抵触する行為はしていない。自治体が定める条例・規則に基づき、必要な資料を揃え、市に事業計画書、景観届を、県に林地開発許可の申請書をそれぞれ提出、いずれも受付印を受領した。市に提出した事業計画書や景観届は条件が整えば即座に受理される。

一方、県に提出した林地開発許可の申請書は、3ヵ月に一度開催される審議会の決議を待たねばならない。合同会社によれば、6月の審議会での通過を予定していたが9月にずれ込んだようだ。担当者は「少なからず焦りはある」と口にする。

というのもこの案件には、FIT法改正により、運転開始期限が設定されているからだ。

運転開始期限の適応対象は、16年度までに設備認定を受け、16年8月1日以降に接続契約を締結した案件と、17年度以降新たに設備認定を取得する案件である。出力10kW超の太陽光発電所の場合、前者は17年4月1日から数えて3年以内に、後者は認定日から3年以内に運開させなければならない。運転開始期限を過ぎた場合、1ヵ月単位で売電期間が短縮されてしまう。

合同会社は14年に設備認定を取得し、今年3月に東京電力と電力の売買契約を交わしたので、運転開始期限は20年の3月31日だ。

着工を急ぐべく、合同会社は賢明に住民に理解を求め、信頼構築に努める。発電所の建設による利点として、地元の建設業者に優先的に仕事を発注することによる雇用の増加や、災害時に緊急避難場所として活用できる点などを訴える。さらに発電所の完成後には会社所在地を伊東市に移し、法人税と発電所の固定資産税により1.5〜2億円程度税金を納め、市に貢献できると説明する。

だが、前途は険しい。6月18日、八幡野区は臨時総会を開催した。代議員171名のうち105人が参加。メガソーラー建設の是非を問う決議を実施したところ、102人が反対した。

太田吉彦八幡野区長は「八幡野区としては明確に反対の意を表明する。今後は市や他地区と協力していく。国道に垂れ幕を張ったり看板を立てたりするなどして住民に周知を図りたい」と語る。

一方6月2日、建設に反対する7団体が市と研究会を開き、意見交換を行っている。5月に就任した小野市長は反対を掲げ当選しただけに、今後の対応が注目される。

ただ、「合同会社は法律、条令を遵守し、正当な手続きを踏んでいる以上、計画を中止させることは難しいだろう。そうであれば、できるだけ住民にとって有利な条件を引き出すための交渉を行うべきではないだろうか」という市議会議員の意見もある。

合同会社の担当者は、「最終的に全員の方に賛成していただくことは難しいとしても、どれだけ多くの方に理解していただけるかが重要だ」としたうえで、「少人数・小グループでの説明会であっても、リクエストがあれば伺ってお話したい。地元に貢献するために、様々な提案をいただきたい」と強調する。

合同会社は9月の着工を目指している。果たして、それまでに両者の溝は埋まるのだろうか。

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