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営農用太陽光に業界団体が混在する理由

近くて遠い農業とPV

ただ、いずれの団体も、営農用太陽光発電の普及を目的としている。ならば、最初に発足したソーラーシェアリング協会が全国の事業者を取りまとめる組織として存在してもよかったはずだ。なぜそれができなかったのだろうか。

同協会を脱退した元会員はこう振り返る。「ソーラーシェアリング協会では、使用する架台やパネルは規格が決まっている。設計が自由にできないので技術開発ができなかった。そのうえ、協会が発注した製品を購入していたのでお金の流れも不透明。ともに活動を続けるのは難しいと判断した」。

確かに、ソーラーシェアリング協会は、商品を流通しているが、協会側には理由があるようだ。同協会の酒本道雄理事は、「農業に悪影響を与えないためには、細型パネルと、角度を付けるための特別な架台を使用するしかない。農業に最適な製品にするために推奨品を販売している」と強調する。

営農用太陽光発電に使用される細型のパネルはW単価80円〜100円と、一般的なパネルに比べ2倍近く高い。普及のためにはコスト低減は必須であるが、酒本理事はこう続ける。

「流通の少ない製品を安く仕入れるためには、業者が集まってある程度のボリュームでメーカーと交渉する必要がある。利益を独占していると思われるのは残念だが、標準化した製品で農業を守るというコンセプトは崩せない」。

団体のなかには、太陽光発電の施工業者もいれば農業従事者もいる。所属する目的は立場によって変わるのだろう。一つにまとめるには無理があったのかもしれない。

しかし、そもそも、売電事業と農業は性質が大きく異なる。売電事業は太陽光発電所を建設してしまえば人手がかからない点において資本集約的だが、農業は労働集約的だ。つまり投資効率を追求する太陽光事業者と農業従事者とでは、理念こそ共有できても、事業観や商慣習まで認め合うことはできないのではないか。

とすれば、売電と農業という相反する2つの事業を融合した営農用太陽光発電とは、運営主体によって性質が変わってしまう曖昧さを孕んでおり、それゆえ事業者同士が結びつきにくい事業体なのだろう。営農用太陽光発電業界における任意団体の乱立は成るべくしてなったのではないか。

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