法規制は未整備も進む発電所のノイズ対策
しばし問題視されてきた太陽光発電所のノイズによって発生する電波妨害。未だに法規制は整備されていないが、徐々に対策が進みつつある。(本誌・中馬成美)
メガソーラーの付近で、AMラジオが途絶えたり、通信回線が使用できなくなったりする電波妨害。太陽光発電所から発生するノイズが原因であるが、法規制が未整備なために責任の所在が不明瞭で、揉めることも少なくなかった。
ノイズの発生源は、主にPCS(パワーコンディショナ)で、直流電圧を交流電圧に変換する過程でノイズが生じるが、ケーブルから発生することもある。ノイズの伝播経路も、空間を伝う場合や電線から伝わるケースもあって一様ではない。
ノイズ対策部品を販売する双信電機の浅間テストラボ碓氷哲之所長は、「PCSやケーブルから発生したノイズが、配電線や連系点を経由して高圧線まで伝播すると影響が大きい。連系点から高圧線を伝って300m先までノイズが届き、AMラジオの電波を妨害することもある」と説明する。
それだけに、「大手通信会社から太陽光発電所の撤去を求められたこともあった」(業界関係者)が、未だに法規制は整備されていない。
確かに、電子機器のノイズに対する規格はVCCI(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)やJIS(日本工業規格)で定められている。
だが、太陽光発電用のPCSは、出力20kW未満に限って、JET(電気安全環境研究所)認証で規格化されているが、中大型PCSにはノイズに対する規格がないのである。
経産省の商務情報政策局商務流通保安グループ電力安全課は、「電気設備の技術基準の解釈の中に電波妨害に関する条文はあるが、太陽光発電に関して電波妨害で指導した例はない」と話す。
電気事業法では、電波妨害に関する内容は規定されているものの、設備基準を満たしてないなどの違反事実の確認ができなければ、指導できないのだろう。
ならば、発電事業者やEPC(設計・調達・建設)が近隣に配慮して自主的に対策を講じるべきであるが、ここに来てノイズ対策は民間主導で広がりつつある。