再エネ抑制量、半年で13億kWh超え
前年比7倍に急増
再エネの出力抑制量が急増している。2023年度上期は前年同期比7倍の13億kWhを超えた。脱炭素化が遠退きかねない事態だ。(本誌・土屋賢太)
東京電力管内を除く9電力管内で再生可能エネルギー電源の出力が抑制されている。大手電力各社が公表した2023年度の出力抑制量によると、北海道電力管内を除く8電力管内で増加し、9電力管内全体で23年度上期は前年同期比6.9倍の13.5億kWhに達した。23年度通期では同比3.1倍の17.6億kWhとなる見込みであり、再エネ電力1kWhの価値を10円とすれば、実に176億円に及ぶ経済損失になる。
特に出力抑制量が多いのは九州電力管内だ。九電管内で太陽光発電所を運営する再エネ会社の幹部は、「出力抑制で年間9億円の損失が出た。このまま抑制が増えると、借入金を返せなくなる」と嘆く。事実、九電管内における23年度上期の出力抑制量は前年同期比7.5倍の8.5億kWhに達し、9電力管内全体の6割以上を占めた。
もっとも、出力抑制は、電力管内の電力供給量が電力需要量を上回りかねない場合に実施される。電力需要が小さい春や秋の日中に、太陽光発電所由来の電力が系統に多く流れるようになり、出力抑制が頻繁に実施されるようになった。23年春は例年より晴天日が多かったほか、九電によると、他の地域で出力抑制が始まり、域外送電が難しくなったという。
そこで九電は、電力需要をシフトする取り組みを始めた。具体的には、電力供給量が電力需要量を上回りやすい時間帯に電力を使う電力消費者に対し、電力代相当分の電子マネーのポイントを付与し、電力代を実質ゼロにするというサービスである。電力消費者には、日中に蓄電設備や電気自動車、エコキュート(ヒートポンプ給湯器)などを活用してもらうわけだ。このほか、九電はオンライン出力抑制による抑制時間の短縮化なども検討している。