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中国製追尾架台で相次ぎトラブル

2000万円の損害発生

中国製の追尾式架台を巡ってトラブルが頻発している。製品不良で日本のEPC(設計・調達・建設)企業が2000万円の損害を被ったらしい。割安な設備は魅力だが、太陽光発電事業は20年にわたる長期のビジネスだ。設備は慎重に選ぶ必要がある。

N社の徳島県三好市の発電所。追尾システムが正常動作せず、パネルの傾きが バラバラになっている。

「最低の企業だ」。そう声を荒げるのは、追尾式太陽光発電システムを販売するエコライフ・インターナショナル(東京都豊島区)の井手錠会長である。

怒りを買ったのは、中国の架台メーカー、ソーラーファースト(厦門晶晟エネルギー技術)社だった。日本法人を開設していない同社は、展示会で顧客を探していたらしく、エコライフITNは2015年春の展示会で同社を知ったという。

井手会長は、「(ソーラーファーストが)当社のラインナップになかった傾斜地用の一軸型追尾架台を製造しており、当時の相場でkWあたり7000円も安く販売していたので興味を持った」と経緯を語る。

やがて両社は意気投合し、15年6月19日にソーラーファースト社の追尾式架台をエコライフITNが日本で独占販売する総代理店契約を結んだのである。

しかし昨夏、ソーラーファースト社から初めて納入された製品を見て、井手会長は愕然とした。「架台を組み立てる金具が大きく曲がっていた。基礎と支柱を固定するネジ穴の大きさも違っており、粗悪な製品だった」のだ。

ソーラーファースト社の製品不良を指摘する声は他にもある。

太陽光発電システムを販売する上場企業のN社は、今年1月と5月に徳島県三好市で建設した中規模発電所でソーラーファースト社の一軸型追尾架台を採用したところ、不具合が多数発覚したという。同社の担当者は、傾き過ぎて架台同士が接触している写真を見せながら、「モーターの始点と終点を制御するマグネットやセンサに設計ミスがあった」と説明する。

同じくソーラーファースト社の一軸型追尾架台を採用した千葉県の販売施工会社のL社は、6月に稼働した小規模発電所で風速センサに不具合が生じたという。担当者は、「(ソーラーファースト社に)遠隔操作で対応してもらい、(同社から)『直った』との報告を受けたが、確認するとセンサのスイッチをオフにされただけだった」と苦笑する。

さらに、前出の3社はソーラーファースト社の後の対応が悪質だと訴える。

井手会長は、「製品不良が発覚して(ソーラーファースト社に)問い合わせたが、返答は『輸送中に曲がった』との一点張りだった」と振り返る。風速センサに不具合があったL社は、エンジニアの派遣を求めたが、ソーラーファースト社から出張費用を約35万円要求されたという。

N社に至っては、再三にわたって部品交換を求めたが、8ヵ月もの間ソーラーファースト社からの対応はなかったらしい。その間にも2ヵ所の発電所で計18基の追尾式システムが正常に動作しなかったため、結局、自社負担で解体し、通常の固定架台を設置し直したのである。担当者は、「発電所のオーナーには、追尾式システムの効果で2割増の発電量を約束していたので、固定架台を多く設置して2割増の発電を確保した。そのため、損害額は約2000万円にも上った」という。

N社とL社は、エコライフITNが総代理店であるにも関わらず、ソーラーファーストと直接取引したが、その理由をN社の担当者は、「(ソーラーファースト社と)メールでやり取りした後に総代理店の存在を知ったので、(総代理店を介さずに取引をしてよいものか)何度も確認したが、『大丈夫だ』と言われた」という。

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