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トランプ米新政権誕生で揺れるPV業界

ITC法は継続か

太陽光発電産業の関係者が最も危惧しているのは、昨年オバマ政権下で延長されたITC法と呼ばれる税制優遇制度の撤回如何である。ITC法は、太陽光発電システムの購入者に対する優遇措置で、納税の際に設備投資費用の30%の税額を控除する制度だ。連邦政府の政策では最も太陽光発電の普及に寄与した助成策といえる。ジョージ・ブッシュ政権時代の2005年に可決され、07年と08年に拡大し、現在まで続いている。

では、トランプ氏が次期大統領に就任すると、ITC法は撤回されてしまうのだろうか。

カリフォルニア州太陽光発電産業協会エグゼクティブ・ディレクタのベルナデッテ・デルチアロ氏は、「トランプ氏の側近は、ITC法はなくならないと言っている」と証言する。

太陽光発電市場のリサーチ・コンサルティング会社でチーフマーケットリサーチアナリストを務めるポーラ・ミンツ氏も、「トランプ政権による影響を語るにはまだ早いが、少なくともITC法は安全だろう。連邦議会で可決された法律は、連邦議会でしか覆せないからだ。ITC法は民主党と共和党の超党派で可決されている」と語り、ITC法の早期撤回の可能性は低いとの見解を示した。

また、太陽光発電産業は、トランプ氏が公約に掲げる雇用創出の面で蔑ろにできないとの見方もある。

太陽エネルギー産業協会でコミュニケーション副社長を務めるダン・ホワイティン氏は、「全米で20.9万人の雇用を持つ太陽光発電産業は、今や米国経済を動かすエンジンだ。連邦政府は〝走る車〟を止めるようなことはしないだろう。それにソーラーは90%の国民から支持を得ている」と主張する。

米PV業界の雇用数で最も多くを占めるのが、施工業者である点も見逃せない。10年には約4.4万人だった従事者が16年には約14万人に増加している。施工業者の多くは地方の企業であるため、トランプ氏の国内雇用拡大策と合致する。

しかし、環境対策に特化した政策は縮小に向かうかもしれない。前出のミンツ氏は、「トランプ政権下では、炭素税は実現しないだろう」との考えを示し、「気候変動の否定論者や懐疑論者が米国環境保護庁と米国連邦エネルギー省の担当になる可能性が高い」と理由を述べた。ただし、それも推測の域を出ない。「トランプ氏はインフラ再建への投資を拡大すると述べている。エネルギーはインフラの一部なので、再エネにもチャンスはある」(ミンツ氏)。

「アメリカを再びグレイトにする」と公約したトランプ氏の構想に、再エネは入り得るか

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