架台の設計規格改訂へ
風力係数見直しに不満の声
経済産業省は、太陽光発電用架台の設計規格を示したJIS(日本工業規格)を年度内にも改訂する見通しだ。急増した太陽光発電設備のなかに規格を満たしていないものが多く、発電所の倒壊事故が複数報告されているためだ。ただ架台メーカーの間では改訂を歓迎しない声も上がっている。
太陽光発電設備の設計に際し、風や積雪、地震荷重に対して必要な強度を示した『太陽電池アレイ用支持物設計標準(JIS C 8955)』。2004年に制定された後、11年に現在の内容に改訂された。
しかしその後FIT法が施行され、太陽光発電の導入が劇的に進むと、規格の問題点や適用できないケースも目立ち、発電所が倒壊する事故もあった。そこで一般社団法人日本電機工業会(JEMA)が今回、改正原案の作成に乗り出した。
改訂を検討している点はいくつかある。まず風力係数だ。風力係数に設計用速度圧とモジュール面積を掛け合わせて設備の設計用風圧荷重を決定するため、風力係数の値は非常に重要だ。JEMAは12年度から3年間、風洞実験を実施し、新案を作成した。ポイントは2点ある。
まず風力係数を求める計算式の見直しだ。例えば地上に太陽光パネルを置く場合、正面から吹く風の風力係数は下の式で求められる。
式は設置方式により異なり、具体的な数値はまだ決まっていないものの、すべての設置方式において、従来よりも1.5倍から2倍の強度が要求される模様だ。
この変更に対して、ある屋根用取り付け金具メーカーの幹部は「1.5から2倍はあまりにも厳し過ぎる。現状のコストを維持したまま耐久性を高めるのは不可能だ。単純に金具の数を増やすしかなく、コストは2倍に跳ね上がってしまう」と嘆く。ある地上設置用架台メーカーの部長も、「改正されると、MWクラスは捨てるしかない」と諦め顔だ。
これに対し、原案の作成を担当したJEMA新エネルギー部技術課の出口洋平主任は「厳し過ぎるとは考えていない」と話す。改訂を歓迎する大手架台メーカー社長は、「安全性が高められるのはよいこと。競争は厳しくなるが、新たなビジネスチャンスを見つけたい」と意欲を見せる。
風力係数における2点目のポイントは、想定設置角度の拡充である。現状のJISでは、地上設置の場合、傾斜角15度以上45度以下で設置したパターンしか風力係数を算出できなかった。ただ実際は、パネルを工場屋根の上に0度で載せたり、豪雪地帯に60度の角度で設置したりするケースもある。
その場合、JEMAは事業者に対して、独自に風洞実験を行うか、同角度で風洞実験を行った場合のデータを入手し、それに基づいて設計するように勧めている。改訂に際し、その不便さを解消するため、想定設置角度を0度から60度の場合まで広げる。