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量的制御の時代に突入か⁉

FIT価格決定法に入札方式浮上

再エネ電気を他社エリアに送電できるか

2030年のミックス達成に向けたもう一つの壁が系統制約をどう乗り越えるか、だ。

指定電力は7電力となり、指定こそ免れた〝中3社〟にしても系統連系マップは真っ赤な地域が多発。基幹系統そのものを増強できればいいが、その原資は結局のところ、電気代に上乗せされ、国民負担となってしまう。

例えば、エリアを超えた全国大での系統運用を図るべく、今年4月に設立された電力広域的運営推進機関(広域機関)のもと、東北東京間連系線と東京中部間連系設備の2つの増強計画が進む。だが、その投資額は莫大で、工期も長期間にわたる。東北東京間の総投資額は1590億円程度、工期は7〜11年ほど。東京中部間は投資額が1750億円程度となり、完成まで10年程度かかる見込みだ。

11月6日、ネットワーク上流側への送配電設備の敷設や増強を実施する際の費用負担ガイドラインが策定された。このガイドライン、一般負担(国民負担)と特定負担(発電設備設置者)の費用負担を明確化し、基幹系統(上位2電圧)は原則、一般負担としたことで、この上位2系統に連系する場合、特定負担者の負担額が減少すると期待されるもの。

とは言え、先の東北東京間、東京中部間の投資計画に戻ると、一般負担はいずれも1000億円オーダーを超えるという。これが再エネ導入のための系統増強だったとしたら、果たして国民理解を得られただろうか。

そこで会議の席上、まずハード(系統増強)は、広域機関がエネルギーミックスを踏まえた風力や太陽光などの電源導入シナリオを策定。広域系統の電力潮流シミュレーションを実施し、ミックス達成に向けた系統増強コストを比較検討する。

15年度にも公表されるこの広域機関の長期方針を待って、議論を深堀りしようという流れが形成され、ハードよりもむしろソフト。つまり、今ある全国大のネットワークを最大限活用する運用方法の改革が急務とされた。

この広域的な系統運用とは何か。例えば9電力エリア単位ではなく、全国大の系統運用をすれば、せっかく発電した太陽光や風力の電気を出力制御する前に、再エネ電気の受け入れ余地のある他エリアへ送電することができる。

出力抑制の前に、他地域への送電を原則とさせる。その際、どのような条件や精算ルールが必要となるのか議論しましょう、というわけだ。

広域機関がいるのだから、広域線をつくって全国大で調整すればいいじゃないか。そう思いがちだが、電気事業法の建てつけは違う。

小売り全面自由化後の16年4月以降も、一般電力(10電力会社)はあくまで自社エリア内での周波数維持義務が課される仕組みだ。つまり、自エリアの接続可能量を超える再エネを導入、運用するインセンティブは法律上、生じない。

そんな一般電力たちが、出力抑制の回避措置として、他社エリアへ送電するには、他社に揚水を使ってもらったり、逆に火力を止めてもらって、再エネ電気を受け入れてもらう必要がある。要するに送電するには、他社に調整費用を支払わなければならないのだ。

その一方、指定7電力管内であれば、自由自在に出力抑制ができる。隣に調整費用を払ってまで、送電するよりも、遥かに自分たちで出力抑制をする方が、インセンティブは高い、というのが法律上の建てつけである。

しかし、逆に言えば、一般電力が他エリアの調整費用を回収、精算できるルールさえあれば、再エネ電気の他社送電は可能となるはず。

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