試練迎えた太陽光発電
FIT制度からの撤退論争始まる
気がつけば設備認定は80GWに迫り、偏重導入によって、買取り費用の原資も系統枠も太陽光発電がほぼ独占。FIT制度から撤退させるべきではないか。そんな議論が9月よりスタートした。前途は多難だ。
「ある種の撤退戦をこれから戦っていかなくてはいけない」「まさにこれは敗戦処理だ」
9月上旬、新たに設置された有識者会議(再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会)は、こうした厳しい発言から幕を開けた。
委員たちの念頭にあるのは電源ミックスと国民負担だ。
6月、2030年の望ましい電源構成として再生可能エネルギーの導入比率が22〜24%に決まった。ただし電力代の削減が基本中の基本で、再エネ拡大に投じられる費用は3.7〜4兆円。一方、15年度までの3年間で1.84兆円を費やしただけあって、太陽光発電は急拡大し、累計導入量は20GWを超えた。10kW超の認定量はミックス目標の64GWを大きく上回る80GWに迫っている。
しかし、30年までの残り15年間を考えれば、買取りに費やせる原資は全体で2兆円超しかない。系統枠も有限だ。だが太陽光以外の電源開発は優に10年近くかかるもの。風力も地熱もバイオマスも今後3倍程度拡大させなければ、電源ミックスそのものが画餅になってしまう。
国民負担を低減しつつ、残った原資で再エネを普及させる制度とは、どうあるべきか。委員たちには、こうした共通認識があり、太陽光偏重からの転換を推し進めたいのだろう。
確かにここ最近の太陽光発電は評判が悪い。ただでさえ、総務省からFIT制度の運用勧告が出されたばかりだ。禁止されたはずの低圧分割が横行しており、実態調査の結果、14年5月〜11月まで認定された3万2813設備(出力30kW以上50kW未満)のうち、1451設備が〝分割の恐れあり〟だという。
また一般電力が提示する工事費負担金の内訳が不十分である。買取り費用の財源が不足し、金融機関からの借り入れを充当した結果、利息などを含めた8.6億円が賦課金に上乗せされたと運用上の不味さを指摘する。
勧告以上に深刻なのが、〝鬼怒川の決壊〟だ。「地滑りの危険性のある地域にメガソーラーが建設され、景観問題を起こす。台風でパネルが飛び、鬼怒川の決壊も太陽光発電所が原因になったという噂もある」。
委員会ではこんな発言もあり、「このままでは再生可能エネルギーが悪者になってしまう」と続けた。