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電力自由化で思わぬ余波

新参小売りへ、FIT買取り義務の例外を

総量規制や登録制などFIT制度の抜本的な見直しが話題を呼ぶさなか、8ヶ月後に迫った小売り全面自由化とFIT制度の噛み合わせの悪さを是正する議論も始まった。テーマは新参者の小売りたちに、買取り拒否の例外を与えるか否か。

16年4月、自由に電気を選べる時代の到来は、新規参入した小売り事業者を混乱させただけ──。

そんな事態を避けようと買取制度運用ワーキンググループ(WG)で始まった議論が、FIT電源の買取り義務者に例外規定を入れるかどうか、だ。

なぜ、例外扱いが必要なのか。それは、いまのFIT制度の建て付けと、自由化後の世界を比較してみるとわかりやすい。

現行法でFIT電源の買取り義務者は一般電力(10電力)や新電力など。一方、系統への接続義務を負うのは送配電部門を持つ一般電力だ。

しかし、自由化後は、一般電力は発電・送配電・小売り部門に分類され、旧一般電力と新電力の小売り部門は、小売り事業者としてひとくくりに。この小売りが買取り義務を負うことになり、また旧一般電力の送配電部門も一般送配電事業者と再定義され、接続義務は一般送配電が負う。

こうした自由化後の環境変化が、見直し理由のひとつ。

しかも、現行法では一般電力と新電力とでは、買取り義務の例外規定が違う。下表の通り、一般電力は虚偽報告や法令違反、検診方法など4つの分野であれば、買取りを拒否できる。だが、新電力は⑤のインバランス料金の負担や⑥の事業規模を含めた6つの要件内であれば、拒否権を発動できると規定され、一般電力とは別扱いをされてきた。

しかし、変動範囲内、つまり3%以内の同時同量変動であっても、追加的な負担があれば、拒否できる⑤のインバランス料金は、自由化後、市場連動となることがすでに決定済み。そもそもの変動範囲内、範囲外という料金概念自体、自由化後にはなくなってしまう。

また仮にFITインバランス特例①を選択すれば、負担なくインバランス精算が可能となる。ならば⑤は例外規定から外そう、というのが一つ目の改定だ。

もうひとつの見直し理由が、イコールフッティング(同等の条件化)という原則論だ。旧一般電力だろうと、新電力であろうと、小売りは小売り。だったら買取り義務の例外規定も統一化させるべきという考えである。

ただ、イコールフッティングで問題となったのが⑥の取り扱いだった。⑥を廃止すれば、旧一般電力とガチンコ勝負をする新規参入組みの競争力を削ぐことにならないか。

こうして登場したのが、「制限なく買取らせず、需要規模などに応じて、買取り量に上限を設定する」というkWに着目した例外規定であった。

仮に制限なく買取り義務を課した場合、一般家庭などへさばき切れないほどの再エネ電気を買い取らなければならず、売り先のない電気は卸取引所で売却せざるを得ない。そうなると小売りの負担は重い。

また小売りには交付金が払われるといっても、その受け取りは、再エネ発電側に買取り代金を支払ってからの数ヶ月後。資本力が弱い小売りだと、その間に資金繰りがショートしてしまうのではないか。

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