中国は16GWの市場を失うのか
EU、中国産パネルに対し11.8%の暫定制裁へ
欧州委員会は6月6日、中国産ウエハ、セル、モジュールに対し、11.8%の反ダンピング(不当廉売)関税を暫定発動させた。ただし、今回の決定はあくまで暫定措置。貿易紛争を懸念するEU加盟国や中国側に配慮し、税率は当初予想の47.6%から大幅に引き下げられ、課税期間も8月6日までの2ヶ月間となった。欧州委員会と中国側との交渉は続くが、是正に向けた合意が得られなければ、8月より税率を47.6%に引き上げる構えだ。
EUの反ダンピング関税は、欧州委員会が暫定適用の決定権を持つ。委員会は特定の加盟国間の利害を超え、EU全体の利益に資すべき判断を下す意思決定機関である。
この決定機関が「9ヶ月間に渡る調査によって、中国製パネルの適正価格は、欧州での販売価格より88%高い」。つまり「88%」もの安い価格で不当廉売を繰り返していたと認定した以上、制裁が発動されるのは当然の結果とも言える。
だが、今回の課税決定に際して、WWF(世界自然保護基金)やEU加盟27ヶ国のうち、ドイツなどおよそ15カ国が反対した模様だ。
そこで、欧州委員会では貿易不均衡の是正、産業界への損失軽減のため、まずは11.8%の関税を2ヶ月間課し、8月以降、47.6%に税率を引き上げるという2段階でのアプローチを取った。
欧州委員会の暫定措置の期限は6ヶ月間。中国側との交渉を継続し、是正に向けた合意を図りたい意向だ。しかし交渉が決裂すれば、12月6日より、5年間に渡る恒久課税が導入される可能性もある。
一方、アメリカに続きEUにも不当廉売で名指しされた中国は、欧州産ワインや自動車に対し、不当廉売の調査に乗り出すなど報復措置とも取れる動きを交え、反対の姿勢を鮮明にしている。
それでもなお、欧州委員会が制裁に踏み切った背景には、「安値攻勢で競合他社を破綻に追い込み、市場を独占。寡占化状態を生んだのちに値上げに動くのでは」という危機感が拭えないためだ。そうなれば市場秩序は乱れ、自由貿易が崩壊してしまう。