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脱炭素電源競売で蓄電池1GW強落札

落札価格は kW2万円台か

先行する海外勢

個別案件をみると、蓄電池の落札事業者は11者で、落札数は30件だった。最も多く落札したのは、11件約342MWのヘキサ・エネルギーサービスだ。落札量は調整係数を乗じた数値のため、実際の合計出力は400MWを超えているものとみられる。

同社の母体は、米国の投資会社のアイスクエアド・キャピタルがアジア太平洋地域の再生可能エネルギー事業会社として立ち上げたヘキサ・リニューアブルズだ。蓄電所SI(システムインテグレータ)の、しろくま電力(旧アフターフィット)と連携して大量落札を実現した。

それに続くのが3件約165MWを落札したレノバで、同社によれば実際の合計出力は215MWだった。

3番目に多かったのは、カナディアン・ソーラー・プロジェクト(=CSP)。ティーダ・パワー110の名で3件145MWを落札した。実際の合計出力は193MWに及ぶという。カナディアン・ソーラーグループは太陽光パネルの生産や太陽光発電所の開発を手掛けつつ、最近は蓄電池モジュールを製造している。蓄電所開発にも乗り出し、欧米や豪州では蓄電所のSIとしても展開中だ。

日本市場では、大規模な太陽光発電所を開発してきたCSPが22年から蓄電事業の準備に着手した。CSPの山田亮太社長は、「23年1月に専門部署を立ち上げ、本格化させた。太陽光発電所の開発で培った知見や情報網も活かし、特別高圧蓄電所を中心に開発している」と話す。同社の国内第1号案件となりそうなのは、北海道で開発中の高圧蓄電所で、年内にも運転を開始する予定だ。

同社は今回のオークションで複数案件を応札。全数落札できたわけではなかったようだが、蓄電池モジュール製造を内製化し、設備一式を調達・設計するSI機能を持つ強みも活かした結果、3件落札できたのだろう。同社エナジー・ストレージ部門の江澤道広ビジネス・デベロップメントディレクターは、「すでに十数ヵ所の候補地を確保したが、必ずしもオークションの活用を前提としているわけではない。今回落札できなかった案件も含め、事業化を推進していく」と語る。

カナディアン・ソーラーは海外での実績も豊富。写真は米国カリフォルニア州の太陽光発電所に併設された大型蓄電設備

なお、落札案件の適用開始期間は27年度以降だ。蓄電所の場合、4年の供給開始期限が設けられており、27年から28年にかけて運転が開始されるものとみられる。設備やEPC(設計・調達・建設)、落札者以外の出資者などが確定していない案件も多いだけに落札を経て受注獲得競争の火ぶたが切られたとも言える。

伊藤忠商事エネルギー・化学品カンパニー電力・環境ソリューション部門次世代エネルギービジネス部の道野僚太統括は、「我々は、設備供給やSIに限らず、出資も含め、様々な形で協力できる。協議を進めていきたい」と意欲的だ。

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