波紋呼ぶ!3本バスバー騒動の真相
京セラの真意
では、京セラには、どのような狙いがあるのか。仮に京セラが3本バスバー技術の一件で他社への警告を強行すれば、業界全体を敵に回すことになる。そうまでして、この技術に執着する理由は何か。
京セラは、ウエハからセル、モジュールまで国内で生産している。国内メーカーの大半が、セルやモジュールの生産拠点を海外に移したり、海外メーカーに製造委託したりしている現状を鑑みれば、京セラは、日本に生産拠点を置いて事業を展開する数少ない〝国内メーカー〟である。
この背景には、73年のオイルショック後、赤字が続いても太陽電池の技術革新にこだわり続けた稲盛和夫名誉会長の理念がある。すなわち、オイルショックによって日本のエネルギーセキュリティの欠陥が露呈した。日本の技術でエネルギーの自給自足を実現しなければならない。太陽電池にはこの課題のひとつの解決策として可能性がある。ならば、太陽電池を日本のエネルギー供給の一端を担えるものに育て上げよう。京セラが30年以上、太陽電池の開発に徹してきた所以だ。
だが、06年頃から、日本の太陽電池技術は海外へ流出し、海外企業も製造設備さえ購入すれば太陽電池を生産できるようになった。技術的蓄積のない企業も、太陽電池を生産するようになり、むしろ安値販売で攻勢をかける。中国メーカーの勢いは凄まじく、わずか数年で世界を席巻した。
ただ、これは正当な資本主義のルールに則った事業展開だったのか。疑念は12年の米政府による調査によってダンピング(不当廉売)と認定された。それでも中国勢は値下げ販売を仕掛け、12年からは日本市場もターゲットのひとつに据える。このままでは日本の太陽電池技術の根幹が揺らぐ。政府が対策を講じないのであれば、京セラ単独でも、特許登録という形で技術を守っていく。
これが京セラの本音であろう。自社の収益確保にとどまらず、日本の太陽電池技術を背負った〝日の丸〟京セラの戦いなのである。いかなる手段も辞さない覚悟のようだ。