550億円の巨額詐欺に揺れるサンテックパワー
創業者の施正栄氏、CEO電撃退任
消えたドイツ連邦債
ことの発端となった7月30日に一体、何が起こったのか。事態は2010年5月にまで遡る。当時、イタリアの投資会社であるグローバルソーラーファンド(GSF)は太陽光発電プロジェクトの開発のためにも資金調達を是が非でも成功させたかった。事実、GSFは中国国家開発銀行から5億5420万ユーロ(約530億円)もの融資を受け取り、140MWあまりのメガソーラープロジェクトを手中に収める。
しかし、銀行側に提示された条件が第3者、つまりサンテックパワーによる債務保証であった。
そもそもGSFとはサンテックパワーの関連会社が80%、施会長10%、さらにサンテックパワーに在籍経験もあるハビエル・ロメロ氏が10%出資し設立されたファンドである。このハビエル・ロメロ氏という人物が経営するGSFキャピタルがGSFの実質的な運営を担当しており、詐欺事件のキーマンだと目されてもいる。
ただ、これら一連の関係性があるとはいえ5億ユーロを超える融資額である。サンテックパワーであってもそう易々と債務保証に応じられる規模ではない。そのとき保証の担保として白羽の矢が立てられたのが、GSFキャピタルが借り受けた5億6000万ユーロ(約550億円)のドイツ連邦債だった。こうしてサンテックパワーは確かに連邦債を受け取っているはずだったのだが…。
それから2年の歳月が流れ、サンテックパワーの財務基盤も大きく毀損し、さらに2013年3月には11億5000万米ドル(約908億円)の転換社債が償還を迎えてしまう。
この償還準備のためGSFの持ち株の売却を進めている最中に、「ドイツ連邦債が存在していなかった可能性があり、詐欺の犠牲者となっているかも知れない」という驚愕の事実が判明するのだ。
ただ「GSFは連結子会社でもないため、業績への直接的な影響はない。とは言え事態を見極めるまでQ2の決算報告を延期する可能性」を示唆していた。