550億円の巨額詐欺に揺れるサンテックパワー
創業者の施正栄氏、CEO電撃退任
倒産リスク指数0.2、危険水域となる1.81を下回る
これがサンテックパワーを襲った悲劇の顛末である。しかし7月30日の発表後、市場は敏感に反応し同社の株価は一時0.81米ドル(約63円)の最安値をつけるなど上場廃止となる危険水域まで下落。その後は何とか1ドル台を回復するも一進一退の状態が続く。
大手証券会社のアナリストは「そもそもサンテックパワーの内部統制のあり様に非常に大きな疑問を感じる。まず資産が債券の10%にも満たないGSFキャピタルが、5億6000万ユーロもの連邦債を借り受けることができたなんて到底、思えない。第2になぜ2010年当時、国債に対するチェックを怠ったのか。業績に与える影響が不確実なままでは流動性リスクを増大させるだけですよ」と語り、手厳しい。
一方、法廷に訴えたサンテックパワーは8月14日、「GSFキャピタルおよびハビエル・ロメロ氏の資産凍結措置が取られ、法廷管財人が彼らの資産監督を行なう裁判所の命令がでた」とし、イタリアにある216MWにのぼる資産状況について緊急メッセージを市場へ送った。
だが「中国国際開発銀行に対する債務保証を他の資産などによって、担保しなければならないでしょうね。そのうえで偶発債務引当金の準備も必要です。一連の状況を見れば転換社債の償還にも影響を及ぼす可能性がある」(証券アナリスト)という。
また別のアナリストは倒産リスクを数値化したアルトマンZスコアをひとつの指標にあげた。「アルトマンの倒産分析自体、非常に古く現代に適用できるか疑問も多い。ただサンテックパワーのいま数値は破綻前のQセルズと同じ0.2の水準だということは事実です」と述べる。
また証券会社のなかには6ヶ月先の株価水準を従来の1.50米ドルから0.88米ドルに切り下げたところもある。「どんな資本注入が仮になされようとも、マネジメントあるいは内部統制を改革しない限り、流動性リスクは消えず、いまの株価水準が続くなら市場シェアも失いかねない」との意見さえあった。
こうした市場反応に答えるためにも施CEOの退任という決断は必要だったのだろう。だがチャイナドリームの体現者として、ときに時代の寵児ともてはやされた氏の退任はひとつの時代の終焉を告げるようだ。
一方、地方政府による介入、救済観測も流れ始めた。その一例として「LDKも昨秋、水面下で破産申請を検討したが結局、江西省が救済に入った。地方政府にとっても雇用や税収入の観点から企業を潰せない」(関係筋)というのだ。
とはいえ、倒産リスクを抱えたのは中国勢ばかりではない。市場関係者はどの企業が生き残るのか。固唾をのんで見守っている。