ドイツ環境省、PV引き締めに本腰
異例のFIT大改造計画を公表 国民負担3倍増に配慮
5年内に独PV市場1GW未満へ
「タリフ改定権の省庁への委譲と年間PV導入量の設定」は、従来の仕組みを大幅に変更する内容だ。この改正案が正式に確定すると、ドイツのPVマーケットは中長期に亘って確実に縮小する。
そもそも、ドイツでは、タリフ改定は年初に1回、日本の国会に相当する連邦議会の審議を経て実施してきた。ただ、09年後半から10年にかけてPV設備の価格が急落し、PV設備の投資回収効率が上昇したため、ドイツのPV導入量が急増するバブル的現象が起こった。そこで、政府は10年にPVの導入量に応じて減額率を決めるルールを策定し、11年から導入した。
年間のPV導入基準量を3.5GWと定め、実際の設置量がプラス・マイナス1GW以内であれば、翌年1月1日の減額率は一律9%とする。ただしその範囲を超えて設置量が伸びた場合、規模に応じて減額率を増やし、逆に基準を下回れば減額率を減らすというものである。さらにPV導入量を半年単位でチェックし、一定の基準を上回った場合は、半年に1回タリフ改定を行うとした。これには、導入規模に応じて翌年の減額率が分かるようにすることで、タリフの〝可視化〟を図り、市場に〝自制〟を促す狙いがあった。
今回の改正は、従来のルールとは大きく思想が異なる。まず、PVの導入基準量を12年と13年が2.5〜3.5GWとし、14年以降は毎年400MWずつ下げていき、17年には0.9〜1.9GWと定める。そして実際の導入量がこの基準量を超えた場合、連邦議会の関与なく、環境省と経済技術省が双方の合意だけでタリフ改定を実施できるようにしようというのである。事実上キャップ(年間の導入制限)を設けたに等しい内容である。
さらに、「〝全量買取り〟から〝一定割合買取り〟へ移行」という改正案を提示した。これは、「屋上施設・出力10kW以下」の場合、年間発電量の85%まではタリフで買取るが、残りの15%は買取りの対象から外すというもの。その他の設備も同様に〝一定割合買取り〟とされ、買取り保証されるのは年間発電量の90%までとしている。
ユーザーは10%もしくは15%の電力は売電できなくなるため、自家消費に回すか、あるいは、電力会社と相対契約を結んで電力卸売市場へ売電するほかない。この改定は、3月9日以降に系統連系する設備を対象にするとし、これによって、現行制度では500kW以下のPV設備は、自家消費分も一定額を支払う方法を採っていたが、3月9日以降これを廃止する。
今回の改正案は、一部報道が「全量買取り廃止」と扱ったことで、「FIT制度そのものが廃止される」という意味に取り違えられ、混乱を招いている。正しくは、「PVで発電した100%分の電力を買取る現行のシステムから、同85〜90%分を買取るシステムに移行しようという法律の改正案を、ドイツ環境省と経済技術省が公開した。この改正案は、今後、ドイツ連邦議会の審議にかけられて、可決すれば実施される」ということである。