デジタル×パワエレで脱炭素実現へ
ファーウェイ、蓄電設備で世界を狙う
高機能で安全
日本では、住宅用ハイブリッド型蓄電設備の販売が最初だった。2021年1月にJET(電気安全環境研究所)認証を取得し、販売網を整えて実証試験を進めると、4月には住宅用ハイブリッド型蓄電設備、『LUNA2000』を発売。データ計測装置や専用アプリも商品化し、21年の実績は数千台に達した。
製品の特長はまず軽いこと。PCSの質量が業界最軽量の19㎏で、蓄電池ユニットは50㎏程度だ。施工業者は、重機なしで設置でき、配送費や施工費を低減できる。そのうえ、蓄電容量の拡張性が高いのだ。実効容量5kWhの1ユニットに充放電機能が搭載されており、最大6ユニット計30kWhまで増設できる。
そして高機能だ。PCSの最大変換効率は97.5%で、自立運転機能が搭載されているうえ、特定負荷方式と全負荷方式を選択でき、停電時には5秒以内に蓄電池からの給電に切り替わる。100Vと200Vの同時出力が可能なため、様々な家電製品を使うことができる。オプティマイザ対応のPCS、『SUN2000−4.95KTL−JPL1』と併用すれば、影の影響を最小化でき、同社の試算では、発電量が最大20%向上するという。
安全面への配慮が随所に施されている点も特長だ。同社は、長寿命で安全なリン酸鉄リチウムイオン蓄電池を採用し、直流アーク放電を自動で検出・遮断するAFCI(アーク障害回路遮断)機能も備えた。これは他の蓄電池にはないもので、同社は直流アークの検出後0.5秒以内に回路を遮断するレベルまで安全性を高めている。温度管理センサも搭載し、火災事故を防ぐ仕組みは万全だ。
なお、蓄電池ユニットには加熱ヒータが内蔵されており、充放電動作の温度環境はマイナス20℃~55℃と幅広い。マイナス25℃以下の寒冷地にも設置可能で、冬季の深夜の停電時も活用できる。
一方、コロナ禍による製品の供給体制には支障がなかったようだ。同社は在庫を確保し、半導体などの材料不足による影響はほぼ皆無だったとしており、22年は2万台以上の出荷を見込んでいる。
もっとも、『LUNA2000』の用途は住宅用に限らない。低圧の自家消費用はもとより、低圧太陽光発電所で採用された事例まである。後者は、太陽光パネルの過積載率を高め、蓄電設備にためた電力を日中のみならず夜間も売電するという24時間売電を狙った発電所である。
すでに低圧太陽光発電所の全量売電はFITの適用外であるが、電力系統の制約上、低圧には接続の余地があり、〝非FIT〟による開発が進みつつある。今後は蓄電設備を使った低圧太陽光発電所の開発が再燃する可能性もあるのだ。その際、軽量で太陽光パネルの下に設置できる同社の蓄電設備は重宝されることだろう。