[特別対談 第28回]

ドイツで進む自家消費

ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長による特別対談。お相手は、両面ガラスパネルと蓄電池を製造する独ソーラーワットのカーステン・パットベルグ営業本部長だ。ドイツの自家消費事情を聞いた。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち) 1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立し、代表取締役に就任。

土肥氏●いま、世界的な潮流として、FIT売電から自家消費へ、太陽光発電設備の利用形態が変化しています。とくに電気代の高いドイツでは、住宅オーナーが蓄電設備を導入して太陽光発電で発電した電力を積極的に自家消費していると聞いています。そこで今回は、ドイツで太陽光パネルと蓄電池を併産している貴社をお迎えして、ドイツの自家消費事情をお伺いできればと思います。まずは簡単に貴社の概要について説明してください。

 

パットベルグ氏●当社は1993年に太陽光パネルメーカーとして創業しましたが、2013年からは蓄電池も製造しています。ドイツのドレスデンに本社を構え、両面ガラスパネルと蓄電池の工場があるほか、国内外に調査・開発センターを設け、生産から研究開発まで力を入れています。営業拠点は、ドイツ国内以外に、豪州とフランス、英国、イタリア、オランダ、スペインにもありまして、従業員数は全体で350人です。

 

土肥氏●太陽光パネルの生産は、両面ガラスパネルを主力とされ、その一方で蓄電池も量産されているので、とても興味深く思います。やはり貴社の製品の最終ユーザーは住宅のオーナーさんになるのでしょうか。

 

パットベルグ氏●お客様は主に住宅や小規模な商業施設のオーナーさんですね。我々はエネルギー管理システムも商品化しているので、太陽光発電設備と蓄電設備をシステムにして提供しています。最初は足元のドイツ市場で製品を販売していましたが、海外展開を強め、いまでは輸出の方が多いですね。ドイツ国内向けの出荷比率は40%で、国外が60%です。これまで世界50ヵ国に製品を出荷しました。

 

土肥氏●太陽光パネルや蓄電池の生産規模はどれくらいになるのでしょうか。また、それぞれ製品の特徴などがあれば、お話しください。

 

パットベルグ氏●年産能力は、両面ガラスタイプを中心に太陽光パネルが150MW、蓄電設備が1万5000セットです。蓄電池は、蓄電容量2.4kWhを1ユニットとし、顧客の要望に応じて4.8kWh、7.2kWh、9.6kWhと増やして出荷していますが、平均は4.8kWhです。

両面ガラスパネルは、単結晶タイプで変換効率が高い点も魅力ですが、最大の特長は長期耐久性です。両面ガラスゆえ構造上、水分や不純物が入らないので30年保証を提供しています。一方の蓄電池は、まず安全性が担保されているということ。さらに太陽光発電で発電した直流電力を直接充電できる点が特長ですね。充放電ロスが少なく、太陽光発電で発電した電力の95%を活用できるのです。

プロフィール●Carsten Pattberg(かーるすてん・ぱっとべるぐ) 1966年独ケルン生まれ。93年ルール大学工学部・経済学部卒業後、独大手メーカーで販売マーケティング部長などを歴任し、2011年独太陽電池大手ソーラーワールドに入社、14年に統括営業本部長に就任。17年8月よりソーラーワット営業本部長に着任。