[特別対談 第27回]
自家消費新時代への扉
インリー・グリーンエナジージャパン 山本譲司社長 ✕ ESI 土肥宏吉社長
ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長による特別対談。お相手は、太陽光パネル大手インリー・グリーンエナジーの日本法人を率いる傍ら、地域新電力会社の立ち上げを支援する山本譲司社長だ。自家消費時代を拓くためには何が必要なのか、考察を深めた。
土肥氏●貴社に対しては、メガソーラー向けに太陽光パネルを拡販する世界の強豪メーカーという印象が強くございますが、いまは地域新電力の立ち上げ支援から電力を自給自足するオフグリッドハウスの販売まで手掛けていらっしゃいます。外資系太陽光パネルメーカーの日本法人という枠に捉われない事業展開に対して、個人的には非常に興味がありますが、社内では相当な変化があったようにお察しします。どのような経緯があったのでしょうか。
山本氏●そもそも特別な戦略があったわけではありません。ただ、外資といっても、日本の会社なので、日本で価値のある仕事をしていこうという思いがあって、パネルを輸入して日本で販売するだけの単機能ではなく、パネル販売からシステム販売へ、システム販売からEPC(設計・調達・建設)へ、EPCからディベロップメントへと展開してきました。
重要なのは、市場のニーズに応えていくことですから、機敏に愚直に反応してきた結果、オフグリッドハウスや地域新電力を全国に広げていく今の形になったのです。地域新電力は現在、10地域で自治体や地元企業と立ち上げを進めています。
土肥氏●FITを活用した太陽光発電市場が成熟しつつあるなか、電力小売りが自由化され、太陽光発電の自家消費という動きが出てきました。だからその変化に対して、貴社のように柔軟に業容を変えていくというのが、本来のあるべき姿なのでしょう。ただ、変化にうまく対応できない企業が多いように思います。実際、太陽光関連企業のなかで自家消費時代を見据えて種蒔きをしている目端の利く企業は、全体の10%にも満たないように思います。なぜ、自家消費はなかなか進まないのでしょうか。
山本氏●FITを活用した太陽光発電所の需要はまだありますし、工事の受注も残っているので、そこに手を取られているというのが実情でしょう。ただ、今後は必ず自家消費・オフグリッドの流れになります。
というのも、再エネを活用すれば、需要家が自ら電力を創ることができ、しかも安いのです。需要地に供給設備を置く地産地消が最も経済的なので、自ずと太陽光の自家消費市場は拡大していくと思います。